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「じゃあ行ってくる」

ザックスが仕事に行くたびに、こみ上げる寂しさを必死に抑えて私は笑ったけれど、彼は何もかも見透かしているようでそんな私の髪をぐしゃぐしゃと撫でて、笑った。安心させるような笑顔は私には逆効果で、余計に心配だった。彼の仕事は危険なことがおおく、死と隣り合わせだ。

でも彼は必ず帰ってくるから、そう信じていた。決まった時間ではないけれど、扉を開けて笑顔を見せる。ボロボロになって帰ってきたときだって、絶対笑顔を見せる。心のどこかで油断していたんだ、彼は絶対、絶対私のもとに帰ってくるからって。

「NO NAME、絶対帰ってくるから、その時は」

彼はいつものように頭を撫でるのではなくて、私の手を握った。指と指と絡めて、しっかり握った。いつものように意地悪に、笑うのではなくて、彼の青い瞳が私を捕らえて、離さない。鼓動が、高鳴った。

「返事、聞かせてくれよ」

やんわりと浮かべた彼の笑顔に、淡い感情が溢れ出す。

「好きだよ、NO NAME」














彼の言葉一つは暖かくて、優しくて、いつも私を笑顔にするんだ。大事でたまらない、大切で、仕方がない。絶対に、失いたくなんかなかった。彼を待つ日が恋しくて、それでも待った。何年も待ったよ、信じていたんだ。彼は笑顔で帰ってくる。

そう、信じていたんだよ。

「ひどいよ、帰ってくるって言ったのに」

掠れた声が教会に響いて、ボロボロと涙がこぼれ落ちた。ぎゅ、っと唇を噛み締めて抑えようとするけれど、止まってなんかくれない。自分の思いも抑えられない、涙と一緒にこぼれ落ちていく、今まで込めていた感情が爆発するみたいに、こぼれ落ちる。

「ずっと、待っていたのに」

ずっと、ずっと待っていた。貴方が帰ってくるのを、あの優しい笑顔で扉を開いて、怪我をした腕を抱えながらも、それでも笑う貴方を。伝えたかったんだ、私も好きだよ、大好きだよ。って、なのになんで。どうして。

「・・・ごめ、」

視界に入ったクラウドの姿に慌てて涙を拭ったが、その手はクラウドの手によって止められた。クラウドはそのまま私の手を握ると、自分の体温を分けるように、強く、優しく握り締めた。

「ごめん」

クラウドの声が鼓膜を揺らして、彼の青い瞳が私を覗く。それは決意のこもっているような、熱のこもった、そんな瞳で思わず私の瞳が揺らいだ。まるで、ザックスを見ているようだった、彼の瞳にそっくりだったけれど、こんなに視線が似ていただろうか。

「ザックスは死んだ、でも俺を守って死んだんだ」

俺の、英雄だった。そう言った瞬間にまた涙がこぼれ落ちた。彼の夢のことは知っていた。何回も語られて、飽きるほどに知っていた。私は彼を笑ったけれど、彼の瞳は輝いていた。だからこそ、こんなに涙が出るのだろうか。

「約束したんだ、俺はザックスのぶんまで生きる、」

「うん、」


生きて、彼はザックスが生きていた証なのだ。


だから、お願い



クラウドから彼が戦う前に必ず言っていた言葉を聞かされた。胸の中に渦巻いていた何かが、ゆっくりと溶け出していくような気がした。彼の言葉が頭の中で広がって、じんじん、と伝わってくる。



夢を抱きしめろ

どんな時でもソルジャーの誇りを手放すな

そして










 

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