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「早くこいよ!これ食いたい!」

目の前で手招きしながら満面の笑みを浮かべるジュダルを遠い目で見つめながらも、はいはいと頷いて財布を取り出しながらも屋台に視線を向ける。チョコバナナにカラーチョコがかかっていて美味しそうだ、ジュダルの分をひとつ買ってあげればぺろっとすぐに食べてしまった、そして物珍しそうにどんどん進んでいく。

周りにはたくさんの人がいて、酔いそう。みんな浴衣や可愛い格好をしていて、羨ましい。今日は夏祭りの日だった、ジュダルと買い物に行った帰りに夏祭りの紙が壁に貼ってあるのを見つけて、ジュダルが行きたいというから、じゃあこっちの世界にいる思い出に・・・と思って連れてきたのはいいのだが・・・

「体力が・・・」

なんでも食って走ってまた食って、そして遊んで、彼はどれほどの体力を持っているのだろう。怖くなってきた、いや、前から彼は怖かったけれど。はしゃぐ彼の後ろ姿を見つめながら、ぼんやりと考えた。

子供っぽい、彼は子供ぽっくて、すごく悪戯好きで厄介な奴、でも中身に抱えているものがすごく大きなもののような気がして、ならない。

時々見せる彼の思いふける表情になんだか胸が締め付けられるような感覚を感じていた、知らない世界にいて不安なんじゃないか、だから彼が楽しそうにはしゃいでいる姿を見るのは嫌いじゃない、むしろ、嬉しいのかもしれない。

「って、ジュダル?」

いつのまにか視界から消えた彼の姿を探してもいない、この人ごみから彼を見つけるのは大変そうだ、一旦人ごみから抜けて人が少ない屋台の裏側に逃げ込んだ、息を吐きだして、携帯も持っていない彼をどう探すか考える。

だが頭に過ぎった一つの考えに頭が真っ白になった。

「・・・もしかして、」

もしかして、元の世界に帰っちゃったとか。ぐらりと揺れた体、足を踏ん張らせて立つ。そして細まった瞳の裏側で考えるのはジュダルのこと、急すぎる。だって、だってまだ何も

なにも・・・・・・、

私は何がしたかったの、ジュダルを家に置いて、彼にこき使われて、そんな彼が帰ったというのに、厄介な彼が帰ったというのに、どうしてこんなに寂しいんだろう、胸がもやもやするのだろう、じんわりと感じた感情が目頭を熱くさせたそのとき、誰かが私の肩を叩いた。振り向けばそこにいたジュダルの姿に思わず声を漏らしてしまった

「まだ、いた・・・」

「あ?なんのことだよ」

不思議そうに奇妙なものを見るように私を見下ろす彼の姿がなんだか妙に懐かしく見えたような気がする、どうしてだろうか。彼が消えてしまったと思うことが、なんだか苦しい。まだここにいる、まだここに存在していると感じるために伸ばした手がジュダルの手に触れれば、ジュダルは眉を寄せて顔を傾けた

「なんだよ」

「なんでもない」

素早く手を離せば、今度はジュダルが私の手を掴んだ、そして走り出した彼に目を見開きながらも声を発する。どこへいくの?!と聞けば帰ってきたのは笑い声ばかり、そしてふいに聞こえた空気を揺す花火の音に夜空を見上げれば、ジュダルの足も止まる。

「ここなら見えるな」

「花火か、」

あの場所からでは見えなかったらしくて、人盛りがある方へ近づいてくれば見えたのは大きな花火だった。赤や黄色、緑、色々な色が飛び散って黒く染まっている空を照らす、空によく映えるその色に釘付けになっていれば、ふいにジュダルの声が聞こえた

「元気出たか?」

「・・・うん、そうだね」

「ま、バカが元気ないと変だからな」

最後の言葉は気にしないで、心配してくれたのかと思えばなんだか嬉しくなった。嬉しくなったはずなのに、花火を見上げる彼の姿が遠くなってしまったように視界がぼやける、そしてふいにこぼれ落ちた涙が地面に落ちた。慌ててそれを拭えばジュダルにバレないように手で目を押さえつけた。

なんで泣いているのだろう、いつかいなくなってしまう彼に

何を思ったのだろう



くだらない想い

   

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