1/2 家の奥底で見つけた古いアルバム、ホコリをかぶっていて、物置の奥の奥の、ずーっと奥で見つけたアルバムだった。母がまだ生きていたなら私は見つけることができなかっただろう、ホコリを叩いて、そのアルバムを開けばそこに写っていたのは母がまだ学生時代の頃の写真だった、短いスカートを履いて、一緒に写っているのは奏子さんだろうか。二人ともすごく若い、母にもこんな時代があったのかと少し驚いた。 「あれ」 最後のページに挟まっていた写真に母が写っていた、隣に写っているのは見知らぬ男性、まさか母の彼氏だった人だろうか、黒髪に後ろで束ねた髪と少し変わった髪型をしているが、端麗な顔立ちに、すごくかっこいい人だと思った、その隣に映る母の表情は笑顔だった、笑顔なのに、なんだか変な感覚を感じた。 できたばかりの母のお墓に向かえば、新しく買ったばかりの花をそえて、線香を取り出す。聞こえてくる蝉の声を感じながらもてを合わせていると、ふいに後ろから声が聞こえた。振り向けば、少し目を見開いた。母のアルバムで見た男の人にそっくりな若い男性がたっていたのだから。彼は眉を寄せながら小さな声でといた。 「ここは、日本という国か」 「はい、そうですけど」 少しおかしな質問だな、と思いながらも答えれば彼はすぐにまた質問してきた、今度は人の名前を訪ねた。その名前は自分の母の名前と一緒だったので、なんだか親近感が湧いた。 「その名前を持っている人はたくさんいますよ、私の母も同じ名前です」 彼は少し目を見開くと、しばらく黙って私を眺めた、私も彼を見返せば蝉がまた大きく鳴き始めた、彼はここは相変わらずうるさい、と囁いた。 「お前はあいつの娘なのか、似てないな。でも雰囲気が似てる」 「貴方が探しているのは私の母親だったんですか?似ていませんよ、私は養子なんです」 母は結婚などしなかった、私を養子にして女手一つで働いて私を自立させた強い人だ、そう、母は強かった、泣くことなどしなかった、弱音なんて吐かなかった 「母は亡くなりました、つい最近」 彼の瞳は細まるとどこか分かっていたように、口元を緩めた。皮肉ではない、どこか違う感覚を感じた、彼からは懐かしい匂いがするような気がする。 「母は夏が嫌いだったんですけど、夏に亡くなってしまって、少し可哀想で」 母は夏が嫌いだった、そんな夏に亡くなった母が可哀想だと私は思っていたが、彼はくすりと笑った、そして小さく笑顔を浮かべた彼に母の面影を感じたようだった。あのアルバムの母の笑顔にそっくりだ、 笑っているのに、どこか切なそうで 「貴方は、」 そう言いかけたとき、もう彼の姿はなかった。 [しおりを挟む] |