1/3 リビングのソファで座る彼、ジュダルがこの世界へ、この家へやってきてから一ヶ月がたった、何日たっても相変わらずな彼の態度も性格も変わらないまま、このまま夏休みが終わってしまうのだろうかと考えながら、彼の隣に座った。 そういえば彼はソファの隣に座ることを許してくれたみたいだ、前は自分のものだといって座らせてくれなかったけれど。 「ジュダルは強い人が好きだよね」 テレビに写っているのはボクシングの試合だった、それを見ている彼は鼻で笑いながらも中々この選手を気に入っているようだった、確か無敗の選手だったと思う。 「ああ、俺の世界にはつえー奴がいっぱいいるぜ、きっとお前も気に入る」 「私は強い人には興味ないな、優しい人がいい。強くて優しいならいいけど」 「優しいだけじゃ何もできないだろうが、世界をぶっ潰せるほどの力がなくちゃな」 まったくどんな世界なんだと毎回思う、そんな中で生きていればこんな人間になってしまうのか、ジュダルのような人間は珍しいんじゃないだろうか、どっちかといえばユニークな人間だろうから。普通の人、いないのかな。 「私が行ったらなじめそうにないね」 「安心しろよ、俺が強くしてやるから」 ジュダルのスパルタに付き合わされるのは勘弁だ、この世界でも厳しいっていうのに、彼の世界に行ったら生きていけないよ。きっとジュダルに倒されて殺される。 「ま、お前は強くなんかなれねーか」 「うん、そうだよ。きっと」 テレビの音と蝉の声だけが響くこの空間に二人きり、いつの間にか慣れてしまって、それが日常になってしまったこの時、彼はいつも何を思っているのだろうか、ふいにテレビが彼の手に持っているリモコンによって消されれば、蝉の声だけが鼓膜を揺らした。彼の嫌いな蝉の声、だからいつもテレビや音楽をかけていたけれど、ジュダルは何も言わない。 「ねえジュダル、夏が終わったら何をしようか、今度はね、少し寒い秋がくるんだよ。それでね次は冬が来るの」 彼の住んでいるところは季節というものがないから暑いだけだけれど、ここでは冬というものがあると教えたことがある、雪の話をすれば彼は興味深そうに聞いていた。 「何がしたいかちゃんと考えておいてね」 「じゃあ、花火」 「今ってこと?」 にやりと笑った彼が机に置いてあった花火を持って庭に出た、その後を追いかけて水を持って庭に出る。 花火 [しおりを挟む] |