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静かな部屋の中、天井を見上げたまま床に横たわっていた。暑い、暑さは嫌いじゃないが、ミンミンうるさい。なんの虫だっけ、確か蝉とかあいつは言ってたよな。頭に浮かんだNO NAMEの姿、なぜ自分がこの世界へ来たのか。ここにいるのかわからないままだ。自分はいつものように迷宮を消そうとしてたはずだった、それが視界が一瞬で光に包まれると同時にここにいた、この家に。奇妙な出来事だが、この世界は俺のいた世界ではない。間違いなく。

「つまんねえ」

ここには強い奴も、いない。戦争だってできない、下手に暴れたって、なにも始まらない。強い奴が見つかるわけでもない。だからしばらくここにいることにした、帰れる日まで。

「・・・?」

蝉の声がなくなったと思えば、次第に降り出したのは雨だった。気温が一気に下がっていくのを感じる、変わりにじめじめとした暑さが舞う。雨の香りもぷんぷんする。うっすらと浮かんだのはNO NAMEの顔だった。あいつ、大丈夫か。今頃濡れてんのかな、同時に浮かんだのはNO NAMEという女のお人好しさ。あいつ・・・泣いたんだったよな。あれは傑作だった。なんで泣くんだよ、嘘泣きなのに。こみ上げた笑いを浮かべれば、体をゆっくりと起こした。窓の外を見ながら、考える。

濡れてなきゃいいけど

「なに心配してんだ・・・?」

囁いた言葉と同時に息を吐けば、浮かんだNO NAMEの泣き顔になんだか顔を歪めたくなった。驚くよりも早く、何かが傷んだあのとき、何かを感じたような気がして。焼き付いた泣き顔と同時に、笑顔を見たいと思った。

随分と綺麗に、泣くんだな

赤い唇を噛み締めて、落ちる涙を拭うこともしないで、ただ悲しみを背負って泣く。そんな泣き顔だった。



落ちた雫を拭う

   

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