1/3 「ハルには会わなくていいの?」 「うん。大丈夫、また会いに来るし・・・それに」 「うん?」 「秘密、すぐわかるよっ」 そう言って手をひらひらと振り上げれば、店を出て行く。それを待っていたかのように外で待機していた車を見つけると、息を吐き出した。扉が開くと同時に見える黒いスーツを身にまとった優山の姿 「今日用事あるんじゃあ・・・」 「そうだね。でも送ってあげるから電話してって言ったのに」 「うん、ごめん。」 はあ、と息を吐き出した優山に手をひかれれば車に乗り込む。 「わざわざ早く終わらせて来たんですよ、お嬢様。」 「お嬢様はやめてって言ったのに、安藤さん」 はは、と言ってごまかす安藤さんに苦笑いすると、優山の視線に気づく 「あ、私優山に間違えられちゃったみたいでさー春に逃げられちゃったよ」 「春は臆病だからね・・・いつまで逃げてるんだか」 「・・・私も逃げられるようになるかな」 私も優山のように、春に逃げられるのかな あの幸せそうな笑顔を、見れないのかな でも間違っても、自分には向けてくれないんだろうなあ 「私の新しい家って?みっちゃんとこに私も居候したかったのになあ」 「それは絶対だめだよ、男しかいない家で・・・」 「別に大丈夫だよ、みんな家族だし」 そう思ってくれてないかも、しれないけど 踏み出したのは一歩 [しおりを挟む] |