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「疲れたー」

人と接することは嫌いじゃないが、好きじゃない。疲れるんだ・・・こう、なんか。笑顔を浮かべることが。あんぱんをかじりながら、誰もいない道具室に逃げ込めば、壁に寄りかかる。息を吐き出しながら、瞳を閉じれば眠気が襲ってきた。









「うるさい!!来るな!!」

隣で怒ったように叫ぶ春の肩は上下に揺れていて、まだ小さかった彼の手は震えていた。人々が好奇の目で春を眺める中、たったひとり、隣に立っていた私は彼の手を握ることも抱き寄せることもなく、ただ彼を見つめていた。

「NO NAME、俺は・・・どうすればいい」

彼は弱々しい声で私の名前を呼んでは助けを求めてきた、だけど私は彼の瞳を眺めただけで、その問には答えることはしなかった。

「・・・自分で、考えたら」

それでも、彼は私の手を握ってくる。振り払っては、振り払っては彼は私の手を握ってくる。それがどうしようもなく嫌で、仕方がなくて。













「ん・・・なに、この状況」

私が寝ている間に何があったのか。私は静かなこの道具室で寝ていたはずなのに前に向かい合って立っている春と優山に唖然とする。周りにはギャラリーの生徒がわらわらといるいし、春は人質であろう女子生徒を抱えているし。おおよそ、優山から逃げてきた春が優山よけの人質を確保したというところかな・・・てかなんでここに。私の眠りを邪魔しやがって。

「・・・春、また同じことを繰り返すの?」

優山の言葉に目を見開いた春の手は、小刻みに震えているように見えて。どうして・・・優山は挑発するんだろう、彼には逆効果だってわかっているのに。



――同じことを繰り返す




「うすせえ!!来るな!!」

彼も私も、同じことを繰り返すのだろうか。双子だけあって、よく・・・似ているんだ。
立ち上がって、スカートについたほこりを払う。

「あれ、起きたの?こんなところで寝てるなんて、ダメだよNO NAME」

「貴方たちのせいで起きたの」

はあ、と息を吐き出せば。まっすぐと春の方へ近づくと、春の瞳は見開く

「お前も近寄るな!!!」

その言葉に足は止まると、小さく呼吸を繰り返した。


――変わったのは、貴方、私?

私を近づけなくなってしまったのは、私のせい



「春、その子を離してあげて」

春の腕がゆっくりと緩むと、女子生徒は床に倒れこむ。春は窓から逃げてしまった。その姿を見つめていると、優山に手を掴まれる。視線を向ければ、笑わない彼の顔に、小さくため息を零す。

「春が私から・・・逃げるのは優山とは違う理由だって知ってるの。だけど、私は・・・何がしたいんだろう」

彼とまた向き合いたいのか

また・・・?


向き合ったことなんて。


なかったよね

   

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