1/3 「琉生、人間も来ているの?」 奥の方で感じた人間の気配、ハンターとは別の、一般人の気配。ちらっと見えた人間の後ろ姿には見覚えがあった、高等部でよく一緒にいた頼りちゃん。間違いなく彼女だ。ヴァンパイア達に絡まれている様子だったので、そこに行こうとしたが私の腕を掴んだのは琉生だった。 「待って、厄介な奴がいる」 疑問を抱いて再び頼りちゃんを見てみるとそこには妙な純潔の気配を持った白蕗更の姿があった、琉生から聞いているが。色々と妙な行動をとっているらしい。 「・・・、」 そして現れたハンターの一人、零の姿に目を見開く。純血種に劣ることのない禍々しさを持った零の気配に、二年前とだいぶ違うことを思い知る。彼はきっと私を恨んでいる、彼を殺した純血種と私は同じ存在なのだから、でも優姫は別だろう。彼にとって、優姫は消せない存在のはずだから 「玖蘭優姫がなんとかするさ。どうしたの、疲れた・・・?」 「え?別に・・・大丈夫だよ・・・」 「本当に?」 「・・・濃い気配の人がいっぱいいすぎて、」 緊張しているわけじゃない、でもこの空気の重さに疲れる。息を吐きだした時、コツンとヒールの響く音が重く聞こえた顔をあげれば、先程まで奥にいた白蕗更が目の前に立っていた。彼女が浮かべた微笑みに、心底心が重くなった。 「はじめまして、白蕗更です。NO NAMEさんにお会いするのは初めてよね、どうぞよろしく」 「よろしくおねがいします、更さん」 更さんが伸ばした白く細い指先が腕に触れようとしたその前に更さんの腕を琉生が掴んだ。琉生には笑顔がなく、ただ真っ直ぐと更さんを見下ろしては不愉快そうに口を開いた。 「NO NAMEには触れないでくれるかな」 「ふふっ、ごめんなさい。では、またね」 琉生は気持ちを顔に出す方ではないけれど、今回は違った。不愉快そうな気配がにじみ出ていて少し驚いたぐらいだ。 「怖かったよ、琉生」 「・・・彼女には気を抜かないで。二人っきりにもならないで」 琉生の言葉に頷くと、彼は満足そうに微笑んだ。ただの焼きもちではない。彼女は本当に何かを隠している、というのは私にもわかった。それに彼女の微笑みが苦手で仕方がない。あの玖蘭枢並に嫌いかもしれない。 「あ・・・」 香ってきた血臭に顔を上げると琉生の顔が歪んだ 「面倒だな」 漂う悪臭 [しおりを挟む] |