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おいで、と言われて抱きつけば父は力強く、柔らかく受け止めてくれた。少しクセのある私の髪を撫でながら、父は母にそっくりだと言ってくれた。子供ながらに母の美しさには気づいていて、それが少し嬉しかった。兄妹婚という父と母の間には、疑問を持たなかった。私たちにはよくあることなのだ、そしていつか私達も両親のようになるだろう。

不満などなかった、それが私達にとって幸せな、時間であるから。

だが鳥かごのように窮屈な社会で生きてきた私達にはわからなかったのだ、父と母の想いも、今何が起こっているのかも。閉じ込められるように育てられたことは、当然だと思い切っていたから。

「お父様、お母様・・・、」

掠れた声だけがこぼれ落ちたあの瞬間が私たちにとっての地獄、そして最後の記憶であった。血の匂いが全身にこびりついて、喉元が熱くなる。そこで私は獣だと実感するのだ、愛する二人の死、同時に喉の渇きを感じる。なんて、なんてよく深い。

そして私の記憶は終わるのだ、最愛の片割れ、琉生の力により人間へとされる。珍しく強力な能力で、その力で人間へとなれば、完全な人間になれる。ヴァンパイアであることを抑える術式ではなく、完全な人間へと。そして私は再度ヴァンパイアとされ、レベルE化に陥るが、その前に琉生の血を飲むことで。人間であった魔法のようなものが解けるのだ。

そして私は14年前の記憶を再開させる。






隙間の記憶

   

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