1/3



風が髪を揺らすと空を見上げた。乗り物にのって、歩いて、随分遠くまできた。向かう先への道のりをしっかりと覚えているから、大丈夫。もうすぐだから。一歩踏み出した時、コツン、と音をたてて目の前に現れた人物に頭を傾けた。

「どこに行く」

「わかってるでしょう、海斗」

海斗の瞳は見開かれると、瞳を細めて、眉を寄せた。そして伸びてきた手が私に触れる寸前に止まると、ゆっくりとその手は戻っていく。

「・・・全部、思い出したのか」

答えることはしなかった、でも海斗に向けて小さな笑みを向けると彼は私を見下ろしながら、息を吐き出す。

「学園へ戻れ」

「やりたいことがあるの」

「NO NAME、」

海斗の名前を囁いて彼の言葉を止めると、私は息を吸い込んだ。小さくごめんね、と放つと彼の目は見開いて、私を抱き寄せた。強く、力強く抱きしめられる。彼の体温は暖かかった、それに比べて私は冷たい。冷たいの。

「迎えに行くつもりだった、両親が死んで学園に行ったお前を・・・一緒に、暮らそうと思ったんだ」

あの時のように、家族は一緒にいるべき、だというのでしょう。私だって一緒にいたいけれど、私たちは家族、じゃないんだ。私は人間じゃ、ないの。貴方とは違うんだよ、海斗。

「・・・でも海斗は私と家族に、なりたくないんだよね」

彼は言った。一緒に暮らしていた時、みんなで暮らしいたとき。リビングのソファで寝っ転がっている私を見下ろしながら、俺たちは家族じゃない、とそう言って。私はこの家のものじゃない、母さんと父さんの子供じゃない。でも一番辛かったのは、彼を傷つけたこと。

「ああ、なりたくないよ」

海斗は私とは家族になりたくない、そう言って。苦しげに、私の腕をとって、唇に触れた彼の唇に目を見開いた、あのとき、過去。

「お前を家族としてなんか、見れない」

私は答えることができない、彼の気持ちに。私は家族として彼を愛しているから。すれ違う気持ちは一つにはなれない、彼を傷つけたくはなかった。海斗を押し返すと、私は彼を見た。そらすことなく、逃げることなく、彼を見つめて、頬を緩める

「お願い、海斗」
















温かい、その手を離して

   

[しおりを挟む]


「#エロ」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -