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昼間なのに客人なんて、一体誰だろう。優姫という考えもありえる。とりあえず着替えて、客間で待っていると部屋の扉が開いた。現れた一人の男の姿に目を見開いて、思わず一歩後ろに下がった。心臓がうるさい、どうして、心の中にあった小さな、小さな感情が大きく膨れ上がったような気がした

「どうして」

「・・・いとこの家にはきちゃいけないっていうこと?」

支葵先輩、彼はいとこであると琉生から聞かされていた。そう母と父の兄である人の息子。夜会で会わないようにしていたのに、どうしてわざわざここまでやってきたのか、私がいきなり消えたことも、純血種だってことも、全部、全部怒っているからここまで来たの?

「二年前までは人間だったのに、純血種だったなんてね」

「自覚がなかったとはいえ、私は先輩を騙していました」

先輩だけじゃない、いろんな人を騙してきた。いろんな人を陥れてきた、私が殺してきたレベルEのヴァンパイアと私は変わらない。純血種だって、変わらないのだ。

一歩私に近づいた先輩は前と全然変わっていなかった、物腰も表情も声も。でもきっと変わっていることはある。変わってはいないけどもう二年もたったのだ、そうあの日から。

「僕の中には君の血がある」

その言葉にドクリと心臓が跳ねる。鮮明に蘇るあの時、苦しくて仕方なかったあの時、私は変わった?あの日から、変わったのだろうか。

「君の中にも僕の血がある」

私は喰らったのだ先輩の血を。それは変えられない事実であって、消せない過去。

「僕はもうあの時の僕じゃない、人形じゃないんだ」

“人形”その言葉に顔が歪んだ、彼には少し変な違和感を覚えていた。それが関係しているのだろうか。支葵先輩がもうあの時の支葵先輩ではないということは、私への気持ちも消えたということになる。それに安心したはずなのに、ズキリと傷んだ胸がなんだか有り避けそうだった

嫌だ、知りたくない

知ってはいけないことがある、私が戻れなくなってしまう。一度理解してしまえば後は簡単だと思うのだ、単純なことだからこそ、気づいてはいけないものがある

「君を迎えに来た、僕のもとから消えた君を取り戻しに」







脱却者

   

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