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「NO NAME様、車の用意ができました」

蓮斗の声が後ろから聞こえたので頷いて夜会から抜け出した、琉生はあの血臭のことを調べに行ってしまった、気配だけで考えるとハンターの一人が殺されたんだと思うけど・・・
琉生も玖蘭枢の組織に同行しているから動かないわけにはいかなく、私は先に帰っていてと言われた。廊下を歩いていると、その先に見えた一人の人間の姿、ハンターだ。近づいていくほどに見えるその姿に少し瞳を細めた

懐かしい、二年ぶりの彼の姿。

私の兄だった、人。

彼の前で止まると、彼はゆっくりと顔を上げた。やはり彼の表情は予想通りだった。眉は寄って、私を憎んでいるような苦しそうな顔をしていた。

「海斗、私を許さないでね」

零も支葵先輩も、私を許さないで欲しい。零と海斗が憎む純血種の私を。いつか来るだろう滅びの時を受け入れられるように、いや受け入れる。でも今は琉生の傍にいなくてはならない、両親の死の原因を、探らなくてはならない。

海斗の顔は歪むと、私から目をそらして下を向いた。そして聞こえる擦り切れそうな声を、ただ何も言わず聞いているしかなかった

「お前はわかっていて言っているのか」

ゆっくりと上がった海斗の顔は何かの痛みを感じて歪んでいるように見えた。傷が疼くように、心に刻まれた大きな傷が、騒いでいるように

「俺がお前を許せないわけなんてないんだ、お前の片割れが両親を殺したことを知っても、お前が純血種であっても、俺は」

言わないでほしい

その先を聞いてしまえば、きっと彼は戻れなくなるだろう

そう、兄であった彼とは家族にも、何者にもなれない

それを悲しいとはもう思ってはいけないのだ、私は、憎まれし存在にならなくちゃ、いけない


「俺はお前のことが好きなんだ、ずっと前から変わらない」


苦しそうに吐き出された言葉が鼓膜を揺らして、私の心臓を揺らしていく

海斗に以前も同じことを言われたことがある、家族にはなりたくない、もっと近い存在になりたい、とでも私はできない、と言った。傷ついた彼、彼を傷つけた私。




どうして私のこと、嫌いになってくれないの


貴方の敵の純血種だよ・・・?


もう家族じゃないんだよ


貴方の両親を殺したのは私といっても過言ではないんだよ


どうして、どうして


嫌いになってくれた方が楽なのに、


じゃないとまた、私は彼を傷つける




「私は海斗のこと、嫌いだよ」













その時に見せた彼の非力な笑顔に、心が傷んで、はちきれそうになって、息ができなくなりそうだった。



「NO NAME様、琉生様には言わないでおきます」

運転席に座る蓮斗の声が聞こえると、瞳を閉じた

「うん、ありがとう」

ポタリと指先に落ちた小さな雫が枯れる日が来るならば、そのときの私は、もう私ではないだろう。











落ちたのは血の涙

 

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