3/4 「優姫ちゃん、」 「優姫でいいよ、えと・・・お名前は」 「思い出せない」 再び私は目を覚ますと意識ははっきりしていた。目の前の少女、優姫のこともちゃんと見えている。ぼやけていたりしない。でも思い出せない記憶、自分のこと、何もかも思い出せな方、一部を、除いては。 「そっか・・・」 「“あの時”のことは覚えてるの、鮮明に記憶に残ってる」 頭に焼き付いた、赤、赤、赤、赤、赤と、白い牙。 頭の中がぐちゃぐちゃになる。私には、それしか残ってない。どうして、なんで。 何も思い出せない。その原因は分かってるのに。それしか覚えてないなんて。 「!」 ふんわりと香った香りと共に、優姫に抱きしめられた。その行為に驚きつつも、それは暖かくて、なんだか嬉しい。 「私がいるからね、大丈夫だよ」 「・・・うん」 すごく安心できて、すごく嬉しくて、すごく暖かいのに なんでこんなこと思ってしまうんだろう 早く、 早く離して [しおりを挟む] |