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「優姫ちゃん、」

「優姫でいいよ、えと・・・お名前は」

「思い出せない」

再び私は目を覚ますと意識ははっきりしていた。目の前の少女、優姫のこともちゃんと見えている。ぼやけていたりしない。でも思い出せない記憶、自分のこと、何もかも思い出せな方、一部を、除いては。

「そっか・・・」

「“あの時”のことは覚えてるの、鮮明に記憶に残ってる」

頭に焼き付いた、赤、赤、赤、赤、赤と、白い牙。

頭の中がぐちゃぐちゃになる。私には、それしか残ってない。どうして、なんで。

何も思い出せない。その原因は分かってるのに。それしか覚えてないなんて。

「!」

ふんわりと香った香りと共に、優姫に抱きしめられた。その行為に驚きつつも、それは暖かくて、なんだか嬉しい。

「私がいるからね、大丈夫だよ」

「・・・うん」

すごく安心できて、すごく嬉しくて、すごく暖かいのに

なんでこんなこと思ってしまうんだろう





早く、



早く離して

 

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