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海斗は手を体を離してくれた。何も言わずに、私の横を通り過ぎた彼に小さく笑みを浮かべて私は歩き始める、もうすぐ目の前だった、懐かしい、偽りの故郷。海斗と私の家だったところ。母が、父が死んだ場所。あまり変わらない外見に、玄関を開けばしん、とした広い部屋が広がった。ただそこに残っているのは、血の染み込んだ床と崩壊した家具。面影などない、どこか違う場所に成り果てていた。

ゆっくり中央まで歩くと、ここに彼が立っていたと感じる。あの少し茶髪の髪を揺らして、彼に変えられたあの瞬間、心臓がうごめいた。苦痛なほどに跳ねる心臓に、自然と苦しみの声が漏れる、フラついた足元、踏ん張って状態を保って顔をあげた瞬間、その心臓のたかなりの正体が姿を現した

開いた玄関から風が髪を揺らす、その先に見えた変わらない茶髪の髪に、あの彼の姿。息を飲んだ、瞬間に彼は自分の目の前に移動していた。言いたいこと、聞きたいこと、色々あるのに出てこない、変わりに涙だけがこぼれ落ちて。小さな叫びが囁かれる。

彼の指がゆっくりと伸びると私の涙を拭った、そして小さく彼の声が鼓膜を揺らす

「泣かないで」

僕のせいだとわかっているから、そう言って彼は私の手を掴むと自分の首先に触れさせた。まるで自分を殺してくれと言っているようで、鼓動が早くなる

「僕を殺して、君になら殺されてもいい。いや、君にやってほしいんだ」

私はすぐに手を振り払うと、彼の首元から手を引いた。恐怖を感じた彼の言葉に、また泣きたくなってしまう。でもだめだ、この涙は彼を苦しめるようだから。だが彼の手が再び私の両腕を掴むと、ぐいと顔が近づいた。端麗すぎる彼の姿に、目を閉じてしまいそうになる、だが彼はそれを許さない。

「僕は、時間に耐えられずに君を変えた、何も知らない君は僕を恨んで当然なんだよ」

冷酷に言い放った彼は自分自身を苦しめているようだった、違う。そう言いたくて、必死に頭を振ると、私は彼を見た。美しいほどの彼を苦しめたくない、貴方のせいじゃない、

「違う、恨んでなんかいない。知りたいの、貴方が苦しむわけを」

貴方のことを、そう放った瞬間に強く抱きしめられると、喉がかっと熱くなるのを感じた。欲求が溢れ出して、目がくらみそうになる。喉が渇くのが早くなった、私は完全な化け物になる、まだだよ。彼を、知らなきゃ。

「君は、僕を望むの」

息を荒く吐き出した私は小さく頷いた。彼を知りたい、彼を愛したい、彼が、欲しい。彼が私の口元に首を近づけると、私の腰に手を回した。彼の白い肌に牙を立てると、ブツリ、と音が響く。



「僕はね、ずっと君が欲しかった」







さあ、魔法が解ける

 

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