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「どう、して」

家に帰ってきた私は、唖然とした。部屋中に充満する血の匂いと無残に残る母親と父親だった人の亡骸。もう息などしていない、そんなのひと目で分かる、息をすることも忘れてたちすくしている私の視界に入ったのは、その亡骸の中心でこちらを見つめている彼の姿。そう、美しいほどの彼、口元には血がついていて、それを舐めとる仕草に背筋が震えた。

彼は小さく笑うと、私に近づく。動かなくなった体、唖然と彼を眺めれば彼の言っていたことを思い出した。“君の家族が憎いよ”そう言っていた意味がわかった。私の家族を殺しに来た、彼は人間ではないと思った、もっと別のもの。会ったときからわかっていたのかもしれない、でもそれでも私は彼に、


彼、に



「・・・僕が憎い?」

何も答えなかった私に彼は小さく笑みを浮かべると、私の頬に触れた。冷たい手、何もかも、愛しく感じられる。どうしてだろう、彼をずっと前から知っている気がして

「君を苦しめたものを、滅ぼしてあげれば君は泣かないですむと思ったんだ」

彼の手の上に覆うように手を重ねると、彼は微笑んだ。その笑顔が悲しく見えて、どうしてそんなに悲しそうに笑うのか、知りたいと思った。彼は涙を流さないで泣いているように見えたから。

「君は消えてしまいたいと思ったことはある・・・?」

彼の瞳が、揺らいだ。少し幼さの残る面影を残した顔立ち、端麗な唇を動かす

「僕は・・・もう充分生きたんだ、充分過ぎたんだよ・・・君のいない時間が永遠に等しいと思っていたから」

そして言った。消えてしまいたい、とそんな言葉に恐怖を覚えた。

「君のいない時間に存在するくらいなら、」

そして彼の顔が首元に埋まると、ブツリと鈍い音と痛み。苦しみはない。ただ彼の言葉が悲しくて

「私がっ・・・一緒に生きるよっ」

そして彼の浮かべた笑顔に、泣きたくなった













「ありがとう」








永遠の時間

 

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