2/3 「ぐ・・・っ・・・」 乾く、喉が乾く。痛い、腹の傷が、どんどん開いていく。そこから漏れる赤い血が自分の脳内をおかしくさせる。今、人間にあったら・・・抑えられない。路地裏まで歩いて、荒く息を吐き出した瞬間、見知った声が聞こえた。 「・・・・・・あんたの血の匂いが、充満してる」 「な、んで」 支葵先輩の姿だった、彼は静かに私を見下ろすと、私の傷に触れる。電流が流れるような痛みを感じると、崩れ落ちる私を支えた先輩。心臓がうるさい、彼の首元に見える血流を食らってしまいたい、と叫んでいる。 「離れてください・・・っ、」 「・・・・・・つべこべ言わず、俺の血を飲めばいい」 「何、言ってるんですか・・・」 先輩は自分でシャツのボタンを外すと、首元を露にさせる。そして変わらぬ瞳で私を見下ろした。 「いいから」 「いや、なのに・・・っ」 牙を使うことも、乾きを感じることも、全て嫌なのに。どうして身体はいうことを聞いてくれない、どうして疼く、心臓が跳ねる、嫌だ・・・気持ち悪い 本当にどうしようもない、化け物だ 「・・・っ・・・」 小さな先輩の息を吐く声が聞こえると、すぐに牙を抜く。自分の口元からしたたる赤い血に、自分が壊れてしまいそうだ。ドクン、ドクンと傷口に熱がこもっていくのが、わかる。肉がつなぎ合わさっていくような、気持ち悪い感覚。 「・・・・・・なんで、泣くの」 私が彼に作った傷跡がふさがっていくのを見て、瞳を細めた。頬を流れていく涙が、落ちる前に先輩が手ですくう。 「・・・・・・っ、ごめん、なさい」 「謝んなくていい、俺がそうしてほしいと思っただけだから」 どうして、先輩がそんなこというのかわからなかったけれど、今はそんなこときにしている場合じゃなかった。どうしようもない私の思いが、消えない。 「泣かれると、面倒」 涙を拭うけれど、またこぼれ落ちてくる。私には泣く権利なんかないのに 「・・・どうして、面倒なのかわかる?」 その言葉に顔をあげたとき、唇が塞がった。柔らかい感触、に塞がれているものがなんなのかすぐに分かる 反射する光の雫 [しおりを挟む] |