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「・・・NO NAME、大丈夫・・・?」

「うん、具合悪いだけだから・・・今日は休む」

「・・・でも、」

私の部屋の扉を持って、心配そうな顔を浮かべる優姫をひいて部屋に入ってきた零。

「ちょ、零」

「お前は行ってろ」

重い言葉に優姫は何かを感じたように扉を閉めた。壁に寄りかかって、荒く息をたてる私を見下ろせば、零は眉を寄せる。その目線の先には散らばったタブレット。

「・・・やっぱりこれ、気持ち悪い」

どうしても口にできないタブレット、昨晩から悩んで悩んで・・・このありさま。もう優姫も私に近づけて欲しくない。笑顔を浮かべて、零を見上げた

「・・・・・・もう潮時かもしれない」

私は凶暴な人間を殺してしまう化け物に成り下がってしまうかもしれない。その前に、消えられれば、楽だろうか。弱い自分は自分で消えることは、できないから。持っている双剣で自分の首を掻っ切る勇気がないから。

「・・・零、」

「まだだ」

その言葉にぼやけた視界が揺らぐ。血色に染まりだした世界に、零の底光りする瞳が映る。

「・・・・・・お前は、まだ耐えられるはずだろ」

「・・・零、なんで・・・そんな顔してるの・・・・・・?」

うつる零の表情がとても寂しそうに見えて、なんだか急に胸が搾り取られるような感覚がした。

「・・・もう失うのは、嫌なんだ」

「失うものなんて、何も・・・ないよ」

零に失うものなんて何もない、零は私を幸せにしてくれるんだ。哀れな化け物を葬ってくれる、再度瞳を開こうとした時、脳が揺らいだ気がした。電流が身体を走ったような感覚、倒れる身体を支えた零に寄りかかりながら、疼く頭の痛みに顔を歪ませる

「・・・っ・・・、いた・・・」

「NO NAME、どうした・・・?!」




フラッシュバックする映像、


誰かの顔、綺麗な髪、綺麗な底光りする瞳、彼だ・・・


私を変えた純血種・・・、


微笑む彼の笑顔が、身体中を満たしていく。どうして、憎いはずの彼


憎いと思う心さえ、あまり感じないけど



『ありがとう』



彼の唇が開いて、耳元で聞こえた声。


どうして、どうして彼は感謝しているの?どうしてこんなに心が落ち着くの・・・?




「おい、NO NAME?!」

零の声に我に返ると、重たい瞳を開いた。零の体を引き離すと、小さく息を吐き出す

「ごめん…大丈夫、」

「・・・飢え、は」

「それも平気、今日は休むから・・・」

零はしばらく私を見つめると、小さく、わかった、と言って部屋を出ていった。

そして血色の世界から元に戻った、視界。大丈夫ではない飢えをこらえるためにタブレットを口の中に押し込む。気持ち悪さが全身を押し寄せたが、こらえて、飲み込む。これじゃあ、今日は本当に動けない。














かすれた所から見えた彼

   

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