3/3 「こんばんは」 「・・・・・・こんばんは、」 理事長宅のお風呂から出てきたところに、目の前に現れた人物に少し驚く。嫌な気配はこの人か・・・。瞳を細めれば、玖蘭枢は妖美な笑顔を浮かべて、薄い唇を開く。 「理事長に話があって来ただけだよ」 「そう、ですか・・・」 ならさっさと目の前から消えて欲しい。この人はなんだか怖い。純血種は他のヴァンパイアとはレベル違うだからだろうけど、違う感覚がする。誰かに似ているような、そんな気がする。私が恐る誰かとは・・・一体誰。 「君は錐生君とは違うね・・・」 その言葉に眉を寄せた。違う・・・? 「自分を変えたヴァンパイアのこと・・・憎くないの・・・?」 すっと伸びてきた手が私の首元に触れる。ドクン、ドクンと心臓の脈打つ音が聞こえてきた、身体中がざわめく。このまま首を掻っ切られるかもしれない恐怖ばかりが、頭の中に浮かぶ。そんな恐怖の色に顔を染める私を見て、玖蘭枢が手を離した。 「安心して、君を殺したりなんかしないよ」 「・・・・・・、」 「それでも僕のことが怖い・・・?僕が純血種だから・・・ではない、君はわかっているはず」 何を、なんで。本当に全部見透かされている、逆に嫌になる。どうして玖蘭枢は自分の目の前にいる。 「君が恐怖を覚える相手は誰、だろうね・・・・・・」 「そんなの知りませんよ、」 知らない、知らない、自分には関係なにのに。怖くて堪らない。全身が真っ赤に染まりそうだ、血で溢れかえりそうだ。気持ち悪い。 「理事長は、あっちの部屋にいます」 それだけ言って、玖蘭枢の横を通り過ぎると、小さな声が聞こえてきた。それは鼓膜を揺らすと、私の瞳を見開く。 「君はよく、似ているね・・・」 アイスブルーが揺れる [しおりを挟む] |