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「早く寮に戻ってください」

優姫とも分かれて夜歩きしている人がいないか探していると、早速三人見つけた。注意するとしぶしぶ三人は寮へと戻っていく。その姿を確認して、再度夜歩きを探そうと歩み始めたとき、目の前に白い制服が見えた。

「・・・ナイトクラスの人は今は授業中なんじゃないんですか?」

昼と夜が逆転している、彼らは。今が昼まで、授業時間。なのに目の前にいる白い制服を身にまとったナイトクラスのヴァンパイアがここにいるのはおかしい。ゆっくりとこちらを振り返った彼の茶色い髪が揺れた。

「あー・・・・・・サボり・・・?」

なんで疑問形なんだろうと考えたが、まあいい。ヴァンパイアの彼は静かに私を見下ろすと、薄い唇を開いた。

「あんたも元人間・・・?」

「・・・はい」

それにあまり興味なさそうな表情を浮かべた彼は私が持っていた菓子に視線を移す。これは優姫に夜食と言われてもらったお菓子だった。チョコのお菓子を眺めている彼に、息を吐き出せば、それを差し出す。

「・・・良かったら、どうぞ」

「じゃあ遠慮なく」

それを受け取って、袋を切って、彼はチョコを次々口に入れていく。ふいに私に袋を差し出した。

「食べれば・・・?」

「・・・じゃあ、」

一個とってチョコを口の中に入れれば、甘い味が口の中いっぱいに広がる。なんだかその感覚を懐かしいと思ってしまう。

「これ食べ終わったら授業に戻ってくださいね」

「えー・・・・・・」

「・・・一応風紀委員なんで貴方が戻るまで私、ここを動けないんです」

それに動じないような顔をした彼だったが、少し考えて薄い唇を再度開く。

「血、くれたらいいよ」

「は・・・?」

「甘いもの食べたら、喉乾いた」

何を言っているのかわからない。この男の人は本当にナイトクラスだろうか。その割にはぼけっとしすぎじゃないだろうか。

「学園内での吸血行為は禁止されてます」

それにまた少し彼は考えると私の腕を掴む、何をするのかと思っていたら、その掴かんでいる指先の爪を肌に食い込ませた。鋭い痛みが走ると、そこから流れ出る赤い血。

「ごめん、わざとじゃない」

「・・・絶対わざとですよね、ちょ・・・」

そんな私の話も聞かないまま、彼の舌が流れていく血を舐めとる。それを慌てて振り払えば、すーっと小さな傷口が治っていった。そのなれない光景にすこし、顔を歪めてため息をつく。

「・・・吸血行為じゃない、ちょっと舐めただけ」

「・・・・・・じゃあもう授業に戻ってください」

小さく彼は返事すると、ナイトクラスの教室へと戻っていく。なんなんだ、あの人。戻り際に、彼の声が聞こえた。それが鼓膜に届くと、不快な気持ちになっていく。


――あんたの血、変な味がした







味なんて知りたくもない

   

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