■ だーれだ
「お前の後ろにいるやつ、出せよ」
その声が響いた瞬間、彼が笑ったのがわかった。同時に地響きでもしているのかのような威圧感と緊張感、体から汗がにじみ出ているのがわかる。冬馬が瞳を細めると私の腕を掴んだ。
「先に船に乗ってろ」
「え、冬馬は」
それに何も答えなかった冬馬、どうせ残って戦うとか言うんだろうけど、絶対そんなかっこいいことさせてやんないんだから。
「ヒーロー気取ってんな!ばかやろう!」
さっきまで冬馬の後ろに隠れていたけれど、やめて前に出た。前の前にいる美形君を見れば、やっぱり照れてしまうけど、頑張れ私。鼻血出そうなのを抑えろ私。
「女?弱そうなのに・・・その力はなんだ?」
「・・・さわ・・・せろ・・・!」
ぽつり、ぽつりと出た言葉に美形君は頭を傾ける。
「その腹筋触らせろ!!!」
目の前にいる彼の後ろにいる冬馬も大きく目を見開いた。
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