■ 弱い
「いやーお手柄だね冬馬!まあ私が落ちたおかげだけど」
「はいはい」
「あしらうな!!」
前の方に見えてきた、行きに乗ってきた船。もう少しで帰れるとるんるんとスキップしていると上の方から声が聞こえた。そりゃまあタイプの声だったので、すぐに顔を上げれば、そこには黒髪をなびかせた青年の姿があった。なんて美形なんだと突っ込みたくなるくらいタイプの顔、それに見えるあの腹筋がたまらない。やばいぞ、だれだこの青年は!
ぼけーっとしていたらふいに冬馬に服を引っ張られて、冬馬の後ろに収められた。ちょっと!冬馬に反撃する前に空中に舞う、じゅうたんに乗った美形の青年がゆっくりと降りてきた。冬馬が剣を構えるのがわかって、それを慌てて止める。
「ちょっと!攻撃するつもり?!彼はきっといい人だ!多分ね!」
「黙ってろ」
私の言葉も聞かないまま冬馬は剣を構えると、前の前の青年は笑ってみせた。
「へーえ、二人だけで攻略したのか。ってことは・・・強いよな、お前ら。」
彼が浮かべた笑顔、そして見開いた瞳、その瞬間に背筋が震えた気がした。そして彼が持っていた小さな杖が振り上げられたとき、大きな氷が出現して、こちらに降り注ぐ。とっさに冬馬の背中に隠れれば、降ってくる氷を冬馬は一つ一つ切り裂いて防いだ。
「・・・やっぱ敵キャラかな、ぐすん」
って悲しんでいるあいだにも降り注ぐ氷の嵐、さすがに冬馬も迷宮攻略後で疲れが出たらしく、私の名前を呼んだ。
「少しはお前も戦え!」
「美形君に攻撃なんてできないよん」
私の言葉にイラっとしたらしく、冬馬が大きな舌打ちをすると剣をバットのように構えて、大きな氷を跳ね返した。
「ああ!なんてことを!」
「うっせえ!」
跳ね返った氷は真っ直ぐ美形君に向かうがあっさりと交わされる、だがやっと彼からの攻撃は止んだようだ、美形君はにやりと笑うと少し冬馬を眺めたが、眉を寄せる。
「お前が迷宮攻略者か・・・でもちげェな。もっとでかい力を感じる」
彼の視線が冬馬の後ろにいる私に向かった瞬間、慌てて冬馬の背中に隠れた。いやだって恥ずかしいし?直視されると照れちゃうし?だめだって、私そうゆうの弱いんだから。
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