俺らの時代 | ナノ



4/4



「君たちもしかして野球部希望?」

三橋を見ながらにやけているNO NAMEの肩を叩いたのは一人の女性だった。

見覚えるある声だと、NO NAMEは振り向くと、NO NAMEの瞳がまたも見開かれた。

「(モモカンだ)」

感動する暇もないまま自分が今置かれている状況に気づいたNO NAMEは瞳を瞬きした。

なぜかグラウンドに連れてこられ、野球部に入る設定になっているNO NAMEを囲んだのは野球部に入部予定の青年達。

「(叫びたい。今ここで「やっふうううーっ」と叫びたい。)」

「なぁお前のポジションは?」

「(田島だよ…ここ、おお振りじゃないか…涙でそうだな、)」

「なぁなぁ聞いてる?!」

「あ、野球経験ないんだ…」

それより自分は女なんだが、という疑問は胸に押し込むことにした。

それ以前にこの状況が嬉しすぎるからである。NO NAMEを囲む青年達は少し驚くと、

監督の女性が近づいてきた。その手に持っているものは、グローブ。

グローブをNO NAMEに差し出すと、微笑む。

「じゃあ、投げてみましょ」

「え、今ですか?!」

さっきまで三打席勝負をしていた中のキャッチャーである青年を監督は呼ぶと、

NO NAMEを指さして、監督は笑う。

頷いた青年はNO NAMEへと近づくと、口を開いた。

「野球やったことないんだってな、俺は阿部、よろしく」

「…よ、よろしく」

今すぐ思いっきり阿部に抱きつきたい衝動を抑えながら、NO NAMEは苦笑いをする。

「まぁ俺に向かって投げればいいだけだから」

そう言って阿部は少し離れると、しゃがみこんでグローブを構えた。

渡されたボールを掴んで、深呼吸する。

「(大丈夫。気楽に投げよう、いや待て。それダメじゃないか、真剣、真剣)」

NO NAMEは散々テレビで見ていた三橋のフォームと同じように体制を作ると、ゆくりと振りかぶる。



“何を信じればいいのかわからないから、ありもしない世界に憧れるんだろう”



ふいに思い出した夢神の言葉。

確かに、そうだと思ったし、違うとも思った。

「(憧れて何が悪いの?それで救われた子達だっていっぱいいるよ)」

何が正しいのか分からない、自分の答えは間違っているだろう、でもそれでもいいんだ



「西浦ーぜえええっ!!!!!!!」

グラウンドに立つ青年の達の視線がNO NAMEに集中した。

NO NAMEから手の離れたボールは真っ直ぐ阿部に向かったと思ったが、方向を変え右に大きくズレる。

阿部の右を通り過ぎたボールはコンクリートにぶつかると、数秒して地面に落ちた。

「あ…やっちまった、ごめん阿部」

あべに近づいたNO NAME、安倍は立ち上がると、口をゆっくりと開いた。

「…お前、どうやったら今の速さ出せるんだよ!!」

「え、いやいや速さは普通だと…それよりコントロール悪すぎでしょ!」

「普通じゃねぇよ!!」

NO NAMEは頭を傾げると、田島は勢い良くNO NAMEの肩を掴んで、瞳を輝かせた、

「俺に向かって投げてよ!!!!!」

「やだね」

即答したNO NAMEに田島はだだをこねたが、NO NAMEは揺らがなかった。

それよりふらつく足元にどれだけ自分が体力ないか、思い知らせれる。

「たった一回投げただけで…ふらふらなんだけど…」

「うっそ!体力ねーの?」

さっき友達になった泉が驚いたような顔をしたが、監督が笑い飛ばす。

「そりゃああんな速度出したら疲れるわよね…コントロールもめちゃくちゃだし」

「はい…そうなんですよ」

「NO NAME君!貴方には今日からびっしり体力つけてもらうわよ!!!」

NO NAMEから声の出ないような叫び声が上がる。

どれだけキツイかは分かっていた、自分は頑張れるだろうかと思う

そもそも女なのに野球部に入っていいのだろうかと、また疑問がよみがえる。

「あの、あたし…おん」

女、と口に出そうとした時、栄口がため息をついてNO NAMEの肩を叩いた。

「羨ましいな、NO NAME…お前がこのグラウンドで野球してたら絶対女子が応援しにくるぞ」

「はぁ?女子が応援しに来ても嬉しくないよ」

「なんだとお前!イケメンだからって調子にのるなあぁ!!」

「(イケメン?それはあたしにとっての嫌味なのか!!あれ?ちょっと…待てよ)」

NO NAMEの目線は下がると、自分の格好に気づく、男子生徒の制服を身にまとっている。

それに少し視界が高くなったような気がしていた。

「(どうゆうこと?!ってことは今自分は…)」

「どうしたんだ?」

「な、なんでもない」

「(い、違和感を感じる!!!とてつもなく下半身に違和感があああぁっ)」

「何泣いてんだよ、NO NAME」

「阿部……胸、貸してください」



0104

   

[しおりを挟む]


「#エロ」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -