NARUTO | ナノ

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雨の音が聞こえる

暗い部屋の中で響きわたる水音は耳の中でゆっくりと響く。

薄暗い視界の中に映ったのは、ぼろぼろになった自分の身体だった。

ガチャリ、と重い音がした。

繋がれた手足はもうほとんど動くことを忘れていた。どうやって動いていたのか、

忘れた。

「…っ、」

体全体で感じる傷の痛みを受け止めながら、小さく息を吐いた。

もう、終わりだ。

もう一週間も何も食べてない、毎日のように受ける拷問に耐え切れそうもない。

傷からは赤いものが吹き出て、私を染めていく。

重い石をのせられたり、足を折られたり、相手を死なせずに自分の知りたい情報を聞き出すために必要なことはさんざんされてきた。

確か昨日指の爪を全て剥ぎ取られた。

あまりの痛さで歪む顔だったが、涙は出なかった。

小さい呼吸を繰り返すが、いつか酸素は身体に行き渡らなくなる。

暗いものを映す視界は黒く染まる。水音が聞こえないように耳はふさがれる。

それもいいかもしれない。この毎日から抜け出されるのならば、

私の頭の中ではあの黄色い人でいっぱいなのだ。

ずっと憧れていたあの人、笑顔が素敵なあの人。

一緒の任務に行けて嬉しかった。足を引っ張らないよう努力した。

でも今回の任務はそう甘くはなかった。

こちらの情報は敵に漏れていた。裏切り者がいたのだ。

もちろんそいつは殺したが、もう遅かった、囲まれた私を逃がそうとしてくれたあの人は

最後まで優しかった。

笑顔は見れなかったけれど、黄色い姿を見れてよかった。

だから私が決心したのだ、私が囮になろうと。

捕まってもいい、拷問されてもいい、殺されてもいい。

絶対に口は割らないから。

「…良かった、良かった」

あの人を守れてよかった、一筋の涙が頬を流れた。

全ての感情がこみ上げたような感覚、流れ出るものは暖かい。

ゆっくりと瞼は下がると、急な眠気に襲われた。

流れる涙は止まらないけど、瞳は閉じられていく。

するとガコン、と音をたてて重い扉が開いた。

拷問者か、敵の仲間か、もう遅い。私はこのまま死ぬ。

「死ぬな」

ふいに聞こえた声ははっきりと耳に入ると、閉じかけた瞳が見開かれる。

この声は、あの人のもの。

黄色いあの人の声、はっきりとわかる。

ぼやけた視界には黄色いものが写った、そしてそれは彼の姿へと変えていく。

遂に幻覚まで見えてしまった。

どうすればいい、このまま天国に行ってもいいのか。

ぼーっとしていると、彼はクナイで私に繋がれていた鎖を切り落とすと、私を抱き上げた。

上にある彼の顔を見つめると、頬には血がついていた。

傷ではないことに安心すると、私の口は開いていた。

「このまま天国に行けるなんて幸せ」

だんだんと視界が明るくなっていく、暗い場所から外に出れるのだ。

それが、嬉しくてたまらない。

すると彼の笑った声が聞こえた。それは優しくて、落ち着く声

「天国じゃないよ。僕は君を助けに来た」

「……、」

その言葉と同時に明るい日差しが私を照らした。

ずっと暗い所にいたせいか視界はぼやけて何も見えないのに、暖かい。

彼が笑っているのが、わかる。


そして乾いた唇に優しいものが触れた。







闇から光へ






     


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