奇跡なんてなまぬるい | ナノ
02033/3
「あーやっと飯にありつけるわい」
あれから授業を受けるたびに人の視線が痛くて痛くて…
まぁそれが楽しかったりするんですが。決してMじゃないですけどね。
人目を避けたくて屋上までやってくると、湊に持たされたお弁当箱を取り出す。
開けると、女の子が作ったような可愛らしいお弁当があった。
卵焼きも綺麗に焼けているし、あの人、女の子になったらいいんじゃないかな。
「それじゃあいっただきま…」
はしで卵焼きをつかもうとしたとき、視界がブレる。
「あれ?!お弁当がない!!」
瞬きしてお弁当があった場所を見つめるが、やっぱりお弁当はない。
「これのこと?」
なんか聞いたことある声がした!と思って後ろを見ると、
唖然とした。
「ひばりんっ…!!!」
会うこと期待してたけど、実際に見たら、ちょーカッコイイじゃないか!
良かった、あえて、今日一日ハッピーだわさ。
一人で和んでいたが、肝心の雲雀の表情はキツかった。
「なにその呼び方…」
「え、いやー…」
しまった、ひばりんなんて普通呼んでないですね、すいません、怒らないで、恐いから
てか、その手に持っているのは私のお弁当じゃありません?!
「それよりそれ返してください!」
「なら勝負だよ、」
「絶対イヤですよ!」
痛いの嫌いなんで!雲雀を相手にできるほど強くありません。
だが雲雀はスタスタこっちに向かってくる、どうやって逃げればいいのか分からずそのまま立ち尽くしていたら、ついに雲雀のトンファーが振り上げられた。
え、この人本気?!
瞳をつぶったが、いつまでたっても痛みはこない。
ゆっくりと瞳を開ければ、すぐそばに雲雀の顔があった。
「君…本当に変だね、一限目から来るなんて変だとは思っていたけど」
「は、はぁ……良かった、」
ほっと胸をなで下ろすと、雲雀の瞳が細まった。
「もしかしてまだ寝ぼけてるとか」
「いやいや、こんな時間になってまで寝ぼける人いないでしょ」
「…いるよ、君とか」
どんだけ遅刻魔なんですか私は、よく雲雀に殺されずにすんだな…。
はあ、とため息をついた瞬間に唇に何か触れた。
え、なに?
柔らかかったと、再度瞬きすると、雲雀の顔が近くにあることに気づく。
ゆっくりと雲雀は離れると、私の顔を確かめるように見下ろした。
「…目、冷めたかい」
「……こ、この…マセガキめええぇっ!!!」
嬉しいけど、嬉しいけど、意味わかんないからとりあえず怒る!!!!
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