奇跡なんてなまぬるい | ナノ
02022/3
「はーい、そこわかります」
一限目は数学だった。得意な教科だし、なにより16歳の私には簡単すぎる内容。
決して頭がいいわけではないが、それなりにできる。
私は教卓の上で誰も答えてくれる人がいないで困っている先生に協力してあげるため、
勢い良く右手を振り上げた。
だが、その途端に教室中の変な目線が私を覆う。
え、なに…?!なんか変なことした?!
元の私の性格なんて知らないが、合わすための努力などしない。
今の私で勘弁してほしいが、さすがにキツすぎる目線。
あ、暗かったんだっけ、私…?
「NO NAME…っ…?どうした、お前」
「はい?別に…ちなみに答えは…」
私がスラスラと答えを述べるとセイン性はびっくりしたように瞳を丸くする。
すると小声で聞こえた声に耳を傾けた。
「いつもなら…“私を指すなんていい度胸じゃないですか”って言うのに…」
女子生徒の声が私に冷や汗をかかせる。
え、喰らいキャラじゃないの?
スケバンキャラなの?そんなの嫌だよ、NO NAMEちゃん…。
「いやー今日はNO NAME、本当に別人みたいなのな!」
後ろの席の山本がニコニコしながらそう言ってきたので、とりあえず苦笑いを返しておいた。
なんか、疲れる…。
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