追わないから逃げないで | ナノ



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「もう、食べねえのかよ」

ジュダルの視線がNO NAMEの食事が入ったお皿から離れて、NO NAMEの瞳に向くと

NO NAMEの瞳は一瞬揺れる。

そして息を呑むと、また止まっていたスプーンを動かし始めた。

それを数秒無言で見つめていたジュダルだったが、ジュダルも食事を再開する。

NO NAMEのお腹はもうぱんぱんだった、だが言うことをきかないと待っているのは痛み。

死なせてくれない痛み、それは苦痛すぎるのに身体はそれを求めている。

どうして。と考える余裕はNO NAMEにはなかった。

「神官様」

ふいに扉の向こうから女官の声が聞こえると、ジュダルはダルそうに部屋を出ていった。

それを見つめていると、前にも目があった女官と再び目があったNO NAME。

女官はジュダルが去ったことを確認すると、部屋の中のNO NAMEに微笑んだ。

「貴方が、神官様のおもちゃ?」

声を出すことも忘れたかのようなNO NAMEの口は開かないまま、

ぼーっと女官を見つめていた。

それが気に食わなかったのか顔の良さそうな女官の表情は強ばると、

唇は弧を描いた。

「あんたもすぐ捨てられるわよ、」

息を吐き出したNO NAMEはジュダルの言うとおりにスープを口に含んで、飲み込んだ。

吐き気が身体を襲って一瞬瞳を閉じ、ゆっくりと開く。

「!」

気づけば女官は自分の目の前にいた、それに驚いたNO NAMEは

スプーンを動かすのをやめる。

神官ともあろう者の部屋に勝手に入っていいわけがない。

だが女官の眉間にはしわが寄っていた。

もう一度瞬きした時、女官の腕が振り上がると、左頬に鋭い痛みを感じた。

「自分だけいい扱いうけてると思わないで!!!」

キン、と響く声がNO NAMEの耳に入って、身体を振動させる。

痛み左頬は赤く晴れ上がっていたが、NO NAMEは奴隷にされていたときに殴られた時の

方が数倍痛かったと思い、ゆっくりと息を吐いた。

「私の方がずっと神官様に可愛がってもらってるわ」

「…そう、」

NO NAMEの瞳が上がると、女官の瞳を捕らえた。

揺れることのない瞳は真っ直ぐと女官を見つめる、女官の瞳が見開くと、

唇が歪む。

「だからさっさと死になさいよ!!!」

次に降ってきたのは女官の手のひらではなくて、テーブルにあったフォークだった。

身体にフォークが触れる前にNO NAMEは固く瞳を閉じた、が痛みはいつまでたっても訪れなかった。











   

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