追わないから逃げないで | ナノ



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「馬鹿なことは考えるなよ」

ジュダルは言った。淡々と、この部屋へ戻ってきた私に向かって苦痛な行為を続けている時に、一生慣れはしない行為の途中に。どうにかなってしまいそうだ、こんなことが毎日続けば私は、私ではなくなってしまう。そもそも、私とは・・・なんだったのだろう。生きる価値のある人間だっただろうか、勝手に夢を見て世界へでたいと思った私は・・・どこかに消えていってしまいそうで・・・なくしたくないのに、霞んで見えなくなってしまう。

「ぐっ・・・あ」

足首にそえられた彼の手にゆっくりと力が入る。痛い、また折られてしまうんではないだろうか、あの時の腕のように。ボキリと嫌な音をたてて、ゆっくりと足の感覚が失われていくのを想像して、全身に鳥肌がたった。彼の手が怖い、彼が伸ばす腕が、怖い。

「逃げようとしたら、お前の両足切ってやるよ」

視界がぼやけて見えなくなってしまいそうな、その言葉に何も感じられなくなってしまう。逃げたい、と一度でも考えれば私はもう生きていけなくなる。両足を切り取られ、一生この部屋でジュダルと共に暮らしていく。自分のせいなんだ、全部彼から逃げ出したせい。間に合ったかもしれない。最初の彼は怖かったけれど、だんだんと変わっていった、なのに・・・私が彼を変えた。私のせいなんだ。彼は小さく笑ってベットの上に横たわると息を吐き出して、瞳をゆっくりと閉じる。その様子をじっと眺めていると、自分の身体を疲れと眠気が襲ったので、同じように横になったがジュダルは何も言わなかった。

彼に背を向けて、瞳を閉じる。明日は何をされるだろうか、今度こそ殺されてしまうんじゃないだろうか。でも彼は私を絶対に殺さない。苦しむよう生かされた私を、絶対許さない。なんだか少し喉元がうずいて、乾いた息だけがこぼれ落ちる。悲しくて堪らない、辛くてたまらない。この部屋から逃げたいとか、そうゆうのではない。何かがまた蘇ってくるようで、嫌になる。そして眠気に身を任せた。



   

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