追わないから逃げないで | ナノ



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真っ暗な、世界

誰かが、泣いている声が聞こえる。

――お前は、忘れたのか

なに・・・どうして、私に語りかけるの。両耳で反響する声は、知っているような声で、知らないような声。

――全部消えてくれると、思うなよ


――消えないんだよ、一生残ってる


「!」

「大丈夫・・・?うなされていたみたいだけど」

ドクン、ドクンと大きく鼓動を刻む心臓がうるさい。寝ていたみたいだった、ユナンさんの心配そうな視線が私を眺めたが、聞こえた足音に扉を見た。立ち上がると、まるでひきつけられているみたいに、扉まで歩み寄った。扉を開こうとすると、ユナンさんの声が響いた。

「・・・選択するのは、君の自由だけれど。僕はオススメしないかな・・・」

「・・・どうゆう、ことですか?」

扉の外で聞こえる足音はモルジアナちゃんのものかもしれない、なのにユナンさんの表情は笑顔を浮かべてはいない。決して答えは言わないけれど、それでも息を飲んで扉を開くと、暗闇が視界に広がった。そうだ・・・ここは真っ暗なんだ、モルジアナちゃんがちゃんとここへこれるようにしないと。少し歩き出すと、もうユナンさんの家の光が弱まっていた、闇が私を呼んでいるかのように引き寄せられる。どんどん、足は動いていく。



――お前は、本当は


「うる、さい」


もう、何も知りたくない。思い出したくない。だから、どうか喋らないで。足音が近づいてくると、笑ったような声が聞こえた。モルジアナちゃんの声じゃない。高すぎなくて低すぎない、人を嘲笑うような、よく知った、声だった。背筋が凍りついた。足が動かない。嫌だ、違う。そう頭の中で言葉を交わしていても、自分はもうわかっていたんだ。





彼だ、彼が・・・いる




「見つけたぜ、NO NAME」


暗闇の中で見えたのは、ジュダルの姿。





   

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