2201 1/2 真っ暗な、世界 誰かが、泣いている声が聞こえる。 ――お前は、忘れたのか なに・・・どうして、私に語りかけるの。両耳で反響する声は、知っているような声で、知らないような声。 ――全部消えてくれると、思うなよ ――消えないんだよ、一生残ってる 「!」 「大丈夫・・・?うなされていたみたいだけど」 ドクン、ドクンと大きく鼓動を刻む心臓がうるさい。寝ていたみたいだった、ユナンさんの心配そうな視線が私を眺めたが、聞こえた足音に扉を見た。立ち上がると、まるでひきつけられているみたいに、扉まで歩み寄った。扉を開こうとすると、ユナンさんの声が響いた。 「・・・選択するのは、君の自由だけれど。僕はオススメしないかな・・・」 「・・・どうゆう、ことですか?」 扉の外で聞こえる足音はモルジアナちゃんのものかもしれない、なのにユナンさんの表情は笑顔を浮かべてはいない。決して答えは言わないけれど、それでも息を飲んで扉を開くと、暗闇が視界に広がった。そうだ・・・ここは真っ暗なんだ、モルジアナちゃんがちゃんとここへこれるようにしないと。少し歩き出すと、もうユナンさんの家の光が弱まっていた、闇が私を呼んでいるかのように引き寄せられる。どんどん、足は動いていく。 ――お前は、本当は 「うる、さい」 もう、何も知りたくない。思い出したくない。だから、どうか喋らないで。足音が近づいてくると、笑ったような声が聞こえた。モルジアナちゃんの声じゃない。高すぎなくて低すぎない、人を嘲笑うような、よく知った、声だった。背筋が凍りついた。足が動かない。嫌だ、違う。そう頭の中で言葉を交わしていても、自分はもうわかっていたんだ。 彼だ、彼が・・・いる 「見つけたぜ、NO NAME」 暗闇の中で見えたのは、ジュダルの姿。 [しおりを挟む] |