追わないから逃げないで | ナノ



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「・・・モルジアナちゃん、ここを?」

目線の先には暗い黒しかみえない。まるで世界の終わりのようなこの大峡谷。落ちてしまえば、死を意味するようなこの谷の向こうに、モルジアナちゃんの仲間がいるかもしれない。モルジアナちゃんの故郷には誰もいなかった。噂を頼りにたどり着いたのが、この谷。

「・・・はい、ここからは私だけで行ったほうが良さそうですね」

「・・・・・・私もいくよ」

シンドリアを出てから結構たった。途中まで一緒だったアリババとアラジンと白龍皇子とも分かれて、モルジアナちゃんの故郷をさがす旅。モルジアナちゃんとの旅路は楽しかった、足でまといにならないように、私もモルジアナちゃんの仲間を探したい。

「・・・NO NAMEさん、ありがとうございます」

それに微笑むと、どうやって降りるかかんがえようと頭を傾けたとき、頭に電流が流れたかのような痛みが走った。その瞬間フラついた身体は、いうことをきかず、谷へと揺らぐ。飲み込まれるように、谷へと投げ出された身体は動かなかった。

「NO NAMEさん!!!!」

「モルジアナちゃん!だめ・・・っ・・・!」

一緒に落ちてしまう。伸ばされたモルジアナちゃんの手を振り払えば、小さく笑った。呆然としているモルジアナちゃんの顔が見えなくなるまで時間はかからなかった。もうほとんど光が見えなくなったのに、まだ落ちていく身体。闇。闇。ここで私の旅も終わる。以外とあっけなかった、と思う。それでも、私はたくさん生きたような気がする。あっけなくなんかない。いろんなものを感じた、まだまだ世界は広いけれど、私は・・・少しは変われたような気がするから。



――本当か


――お前は変わったのか?




頭の中で響く声には、いつまでたってもなれない。私を否定して、押し殺す。それも今日で終わりだ、私は・・・死ぬ。そして闇の中で、瞳を閉じた。
最後に見えたのは、涙を流している・・・彼の姿。











「きっと君なら変われるさ」





   

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