追わないから逃げないで | ナノ



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「モルジアナちゃん」

迷宮を攻略して帰ってきたアラジンとアリババと白龍皇子とモルジアナちゃん。だが、みんなひどい怪我を負って帰ってきた、そして未だに目を覚まさないモルジアナちゃんの横たわるベッドの横の椅子に座りながら、ぼんやりとモルジアナちゃんを眺める。

彼女は、私にとてもよく接してくれていた。歳も同じぐらいで、同じ境遇で育ってきた私達にはどこか似ているところもあった気がした。でも違う、彼女は私より全然綺麗な心を持って、戦っている。私は・・・どうだろう、逃げることしかしてこなかったような気がする。戦うことなど、できないのだ。そんな力も勇気も・・・ないから。非力な私に、なにかできることなど・・・あるのだろうか。

「・・・貴方は、本当にすごい」

仲間のために戦い、傷を負うモルジアナちゃんは本当にすごい。どうしたら、彼女みたいになれるんだろう、どうしたら強く、あれるだろうか。冷たくなった手にぬくもりを分け与えるように合わさった小さな手に目を見開く。いつのまにか傍にいたアラジンは私に微笑みを向けると、私の手を握り締める。ゆっくりと伝わる彼の体温は心地よくて温かい。どうしてこんなに・・・暖かいんだろう。どうしてこんなに・・・安心するのだろう。瞳を閉じれば、自然に瞳から涙がこぼれ落ちた。ポタポタとこぼれ落ちる涙を拭うこともしないで、唇を噛み締める。

「泣かないで、NO NAME」

アラジンの声が鼓膜を揺らすたびに、また涙はこぼれ落ちる。悲しいわけじゃない。辛いわけじゃない。苦しいわけじゃない。ただ・・・温かい。彼は、温かい。それが、拒絶反応を起こすみたいに、涙が溢れ出す。普通じゃない、普通がわからない。ただすこし怖い考えが頭をよぎると、アラジンの手を振り払った。

「アラジン・・・ごめんね、ごめん・・・」

優しくしないで、温かみを与えないで、それに自然と甘えてしまう。すがりついてしまう。すがりついた先に、何が待っているのかわからないから、怖くて。そのぬくもりが怖くて。彼を壊してしまいそうだ。まるであの時のジュダルのように、涙を零したジュダルのように・・・アラジンも・・・、

「大丈夫だよ」

アラジンの手が再び、私の手を包み込むと、アラジンは微笑みを浮かべる。



――大丈夫だよ



その言葉だけで、なぜこんなにも心は軽くなるんだろう

なぜ、彼はこんなにも暖かいんだろう




   

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