1601 1/2 熱い、ジュダルの握っている腕が熱いのに、もうほとんど感覚がない。だんだんと青くなるその腕をジュダルはゆっくりと離した時、私を抱き寄せたのはシンドバット様だった。その険悪に満ちた表情でジュダルを睨むと、ジュダルはにやりと笑う。 「お前は・・・!!」 「なにそんな怒ってんだよ」 ブラン、と力を失った腕を片方の腕で支えて、顔を下げた。見れない、彼の顔を見れない。怖い、目の前のジュダルはこんなに恐ろしいものを纏った人だったろうか。気づかなかった・・・だけだろうか。でもちらつくのは、彼の涙を零したあの表情で、胸の中で広がった感情に、すこし吐き気がした。 「もしかして、お前・・・・・・」 私をしっかりと支えたシンドバット様の手が強くなった。顔をあげると、瞳を細めたジュダルの顔が見えた、そしてそれに応えるように同じように瞳を細めるシンドバット様の顔。どちらとも、今は恐ろしいとしかいいようのないものを纏っているように見えた。 「許さねぇぞ」 「ジュダル・・・お前の愛情は行き過ぎてる」 愛情、彼は愛に飢えた子供のよう。彼が求めているものは・・・愛情だっただろうか。そうだとしても、それは私からではなくてもいいものだったはず。私は、彼のどこに気に入られたのだ、なんの力もない、非力な私の歩いた道は汚かった、どうしてあの時、奴隷から逃げようとしたのだろう。逃げなければ彼と出会わなかったのに。 彼と・・・出会わなければ・・・良かった 私は知ってしまったのだ 彼に出会ったことで、孤独さを、愛情と呼ばれる、何かを。 本当に、愛情・・・? 私はただ、愛にすがる彼の手を握り締めたかっただけなのかもしれない 自分の飢えをごまかすように、彼の手をとって、彼に愛情を注ぐ それで、成り立つはずだった。寄り添っていくはずだった。 なのに、私は逃げた 逃げたんだよ、私は 幸せになれると本気で思ってしまったから [しおりを挟む] |