追わないから逃げないで | ナノ



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「お嬢ちゃん、可愛いね」

「!」

肩に伸ばされた手にびくつくと、私を見下ろしていたおじいさんはにこやかに笑う。

「これ食べるかい?この国に住むんだろう?」

手渡された果物に、優しい笑顔。この国の人たちはみんな、幸せそうだ。自分まで、幸せな気分に浸ってしまいそう。ヤムライハさんがちょっと待っていて、といったので、酒屋の指定されたテーブルの席に座り込んで、すっかり暗くなった夜空を見上げた。

空は変わらない。どんな人にだって、同じ空が見えているはずなのに。

「・・・どうして、同じ世界に生きる人間は、違うのかな」

「・・・・・・その質問には、今は答えられそうにないな」

いきなりきこえてきた声にすこし驚くと、隣の席にはシンドバット様がいた。にこりと笑ったシンドバット様の薄い唇は再び開く

「・・・俺は、そんなみんなが幸せになれる国をつくりたいんだよ」

「・・・・・・、」

その願いは叶うだろうか、叶ってほしい。この国を築けたこの人ならば、できるんじゃないだろうか。

「・・・・・・今、笑ったか?」

「え、」

すっと伸びてきた手が頬に触れると、びくりと背中を震わせてしまった。それにシンドバット様は小さく息を吐き出すと、すっと腕を引き戻した。

「すまん」

「いえ・・・すいません」

「ちょっと!なに勝手にNO NAMEと話してるんですか?!」

戻ってきたヤムライハさんは手に飲み物と食事を抱えていて、シンドバット様を見ては嫌そうな顔をした。そのあと、シンドバット様に仕える二人がシンドバット様を回収しに来た。

「・・・はぁーあの人まだ仕事残ってるのにまた抜け出してきたのね」

「・・・でも、すごくいい王様ですね」

「ええ、そうね」





   

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