1101 1/2 「外に出てみましょうよ」 そのヤムライハさんの一言に、すこし戸惑った。この国へ来て二日。ずっと部屋の中で過ごしていた私が、この国へ出る。美しく、平和であろうこの国を見てみたいのに、足がすくんで動かない。こんな私が、こんな国へ踏み入れていいのだろうか。そんな気持ちだけぐるぐると回っていたのに、ヤムライハさんの掴んだ手に熱がこもったのがわかって、顔をあげる。 「大丈夫、一緒にいるわ」 そんなヤムライハさんの笑顔に、自然と笑みを零した やっと部屋から出れば、煌帝国と少し雰囲気の違う作りの広い廊下、私の部屋がある塔から出れば、そこは本当に美しい国だった。 広がる建物に、広い海。私が煌帝国で見てきた景色と、奴隷として生活してきた景色とも違う。 「美しい国でしょう?ここで暮らす人々だって同じ」 この国に最初から住んでいたなら、私は今頃こんな思いをしなくて良かったのだろうか、今までの生活がひどく汚く見えて、自分がすごく嫌になる。自分だけがこんな思いをしているわけじゃない、世界には私よりひどいめにあっている人々がたくさんいるのに、私は、私は・・・ 「ほら、行きましょう!」 「あれ?ヤムさん、どこに行くんだい?」 突然したの方から聞こえてきた声にびくりと、すると目の前に現れた少年と青年と少女。 「今からNO NAMEと一緒にこの国を回るのよ」 「え?」 ばちり、と自分と似たような年代の子達と目があった。なんだか消えてなくなりたいような気持ちになる。彼らはきっとこの国で幸せに生きてきた人々で、私とは全然違う、違うんだ。 「可愛いお姉さんだねえ!僕はアラジン!よろしくね!」 「あ、アラジン・・・君?」 アラジンと名乗った少年と、アリババと名乗った自分より少し上の青年と、モルジアナと名乗った少し変わった顔立ちの可愛らしい少女。 「私は、NO NAMEです・・・、」 すこしかすれたような声がでてしまって、なんだが恥ずかしくなる。ヤムライハさんが笑うと、後でゆっくり三人と話しましょう、と言われて戸惑う。うまく話せるだろうか、大丈夫だろうか、私が汚い人間だと、知られないだろうか そんな不安で、いっぱいになる [しおりを挟む] |