追わないから逃げないで | ナノ



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壁にもたれて、ただ一点を見つめているジュダルの隣にしゃがみこんで、話しかけたがなんの反応のないジュダル、乾いた瞳が瞬きもしない

「ジュダル…」

冷たい床に投げ出されたジュダルの手に触れようと手を伸ばしたが、その行為はジュダルの言葉によって止められる。

「触るな」

ずきずきと胸が傷んだ、行く宛のない手はひっこむと、NO NAMEは部屋から出ていった。

向かったのはいつもの庭園、そこには紅玉姫の姿あった。

いつもより瞳を輝かせて、NO NAMEの姿を見ると、嬉しそうに笑顔を見せる

「ねぇNO NAME、聞いてくれる?」

「なんでしょう?」

「…あの人がここへ来ているの」

“あの人”それはいつも話しから聞いている紅玉姫の想い人、

確かシンドリア王国の王と聞いている。その王がこの宮殿へ来ているのか。

「では、姫様もうその方とお話になったのですか?」

その言葉を聞くとなんだか沈んだように顔を曇らして、瞳に涙を溜め始める

姫様は最初の印象とは違く、すごく可愛い方だ、純粋で綺麗で、すごく女の子だと思った。

「それが…話しかけようとしても、勇気がなくて」

「姫様…勇気をだしてください、こんなに可愛らしい姫様なんですから…きっと大丈夫ですよ」

「ありがとうNO NAME、でももうあの方は明日帰ってしまうの…」

「それは……、もう時間はないんですか?」

紅玉姫は小さく頷くと、可愛らしい笑顔を見せる。

「いいの、ありがとうNO NAME、あの方とはきっとまた会えるわ」

とてもまっすぐで、美しい紅玉姫。時に羨ましくなる、

「貴方はどうなの?ジュダルちゃんと」

「私は……」


私は…何?


恋人?違う…私は彼を満たす道具、


彼は、愛が足りない……青年、


「NO NAME?」

「あ、ごめんなさい…、」

紅玉姫は優しく頷くとNO NAMEの手を握った。

「姫様、」

紅玉姫の付き人が姫様を呼ぶと名残惜しそうに姫は息を吐いて、笑う

「ではまたね、NO NAME」

「はい」




   

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