追わないから逃げないで | ナノ



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黄金に染まりつつある空から太陽が沈んでいく。

それをぼんやりと眺めながら、どこかを目指しているわけでもないのに

ゆっくりと足は進む。

とうとう力尽きた足は動くことをやめると、そのままNO NAMEは地面に崩れ落ちていく。

立ち上がろうとしても足を拘束する枷がそれを阻止する。

自分はここで朽ち果てるのだろうか。

そう思った時、NO NAMEの前に降り立った人物にNO NAMEは顔をあげた。

「よぉ…お前が脱走した奴隷の一人?」

声を発したのは一人の青年だった。

見知らぬ人の姿だったが、NO NAMEは理解していた、自分達を追って来たのだと。

「ったく…本当に面倒だな、なんで俺が奴隷なんかの捜索なんか」

足を拘束する枷は自らを奴隷とあらわしていた。

もう逃げることにも疲れはてたNO NAMEの口からこぼれ落ちたのは、

自らを死へと追いやる言葉だった。青年の口元は弧を描くと、

「あっそ、なら殺すぜ」

手が振り上げられた瞬間もNO NAMEは青年から目をそらすことはなかった。

漆黒に染まるNO NAMEの瞳は真を貫いている。

死ぬのが怖いわけじゃない、ただ死の先を知ってみたいのだ。

そんな瞳を青年は見ると、振り上げた手をゆっくりと下ろした、

そしてNO NAMEに視線を合わすようにしゃがみこむと、瞳を細める。

「なんだよ、その目は」

まるで不愉快だと言わんばかりの目線だったが、NO NAMEの瞳は揺らがなかった。

今まで何万回も同じような目線を送られ続けたNO NAMEにはその目線は怖くはなかった。

「お前、死ぬのが怖くないのか」

青年の問いにNO NAMEは小さく首を振ると、その瞳をゆっくりと細めた。

それを見つめていた青年に向かって、囁くようにNO NAMEは呟いた。

「生きることの方が怖い」

青年はぼんやりとNO NAMEの瞳を見つめていた、ふいに立ち上がると、

青年はNO NAMEを見下ろして、口を開く。

青年は黄金に照らされていて、NO NAMEは眩しそうに瞳を細めた。



「おもしれぇ…お前、俺んとこに来い」



   

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