追わないから逃げないで | ナノ



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重たい瞳を開けると、誰かに抱きしめられていることに気づく。

NO NAMEの身体を抱きしめていたのはジュダルで、ジュダルは深く瞳を閉じていた。

NO NAMEは瞳を細くして、ジュダルを見つめた。

「(なんで、ジュダルは…)」

自分にあんな真似をしたんだろう、と疑問が頭の中で広がっていた。

自分が泣いていた理由も整理がつかないままだった。

昨日、泣き止むまで抱きしめてくれたジュダルは、落ち着いた後でも手を離すことはなかった。

「……、」

NO NAMEには訳がわからなかった、今まで自分を傷つけることで快感を覚えていたジュダルの行動が。

そして自分の変わりようが。

頭に響くのはあの女官の言葉、胸を締め付けて、心を痛めつける。


「っ…う、」


自然とまたこぼれ落ちた涙、NO NAMEは思わず近くにあるジュダルの顔を見つめた。

頬を伝わる涙を抑えながら、ジュダルが起きないように手を振り払うとベットから出た。

「(やだ、泣いているところなんか見せたくない)」

私が泣いたら、

彼はまた、苦しそうな顔をするのだろうか。

搾り取られたような声で私の名前を呼ぶのだろうか。


NO NAMEは思わず部屋の扉に手をかけた、一瞬戸惑ったが、ゆっくりと扉を開く。

扉の向こうの世界は、想像していたとおりの所だった。

王宮の中だとは分かっていたが、NO NAMEは目を見開く。

「ちょっと、そこの貴方」

高い声にNO NAMEの肩が震えた。

振り向くと、そこには綺麗な女性が立っていた。

服や飾り物からして、自分よりずっと高い地位にいる人だと理解する。

「……女官じゃないわよね」

近づいてきた彼女に思わず息を呑む、本当に綺麗な女性だったからだ。

自分とは比べ物にならないくらいの美しさ、

「…貴方、もしかしてジュダルちゃんの」

「……あ、の」

彼女が瞳がNO NAMEに向けられると同時に、NO NAMEの瞳が揺らぐ。

その瞬間、NO NAMEの腕が引っ張られる、

「ジュダルちゃん」

NO NAMEは突然現れたジュダルを見上げると、ギリっと掴まれた腕に痛みを感じた。

ジュダルの瞳は細く、笑顔を浮かべることはない。

「ババァ、どっかいけ」

「……はぁ、いいけど、女の子を泣かすなんて男として最低よ」

彼女は静かにそう言うと、立ち去っていった。

それをジュダルは確認すると、ぐいっと腕をひいた。











   

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