追わないから逃げないで | ナノ



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感じたことのない痛み、左頬に灯る熱は冷めることのない。

もう一度ジュダルが右手を振り上げたとたんにNO NAMEの両腕は自らを守るために

自分の顔を囲っていた。

「いや…っ…」

自然と出ていた声は小さく、細い声だったが、ジュダルはそれをしっかりと聞いた。

ジュダルの瞳はNO NAMEの怯える腕を掴みあげると、

そのまま床に押し倒した、馬乗りになったジュダルはまっすぐにNO NAMEを見下ろすと

顔を近づけた、鼻と鼻がぶつかる距離で、ジュダルは囁く。

「なんでそんな顔するんだよ」

そして唇が触れると荒々しく口を割られる、何度も何度も触れ合う唇と

絡み合う舌は身体を熱くさせる、ゆっくりと唇が離れれば、

ジュダルの射抜くような瞳がNO NAMEを見ていた。

「やめろよ、気に食わない」

「っ…だって…っ…」

瞳に溢れ出す涙はどうしようもなかった、

痛い、痛い、と叫び出す身体は反応する。

「なんだよ?!」

大きいジュダルの声はますますNO NAMEの身体を震え上がらせる。

びくびくするNO NAMEにジュダルは素早く離れると、眉をしかめて部屋を出ていく。

解放された身体を素早く起き上がらせると、NO NAMEは痛む左頬をさすった。

血も傷つけられるのも慣れているはずなのに、辛い。

なんで、奴隷の時はもっといっぱい痛みを与えられてきたのに。

だからこそ、死にたいと思うようになってしまったのに。


一番、辛いのは、なぜ。


   

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