追わないから逃げないで | ナノ



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「・・・、」


荒く息を吐き出して、瞳を開くと変わらなぬジュダルの部屋の天井があった。息を吐き出しながら、ゆっくりと起き上がると再度瞳を閉じる。怖い、嫌だ、もう私は自由になりたいんだ。誰かに捕らわれるのは、充分だ。逃げ出したい、ここから、彼から逃げ出したい。

ベットから抜け出そうとしたときに、左手の違和感に気づく。暖かかった、冷たい右手と違って、左手が温かい。その正体はすぐにわかった。鼓動が小さく聞こえてくるようで。視界に映った私の手をしっかりとにぎる彼の手、指と指の間で強く握られ、温かい彼の手。息をゆっくりと吸い込むと、小さな雫が頬にこぼれ落ちた、

窓から朝日が差し込むと私たちを照らした、離れることのない彼の手を眺めながら、ただ静かに涙を流した。

なんて、温かい手だろう

なんて、優しい握り締め方だろう

眠っている彼はしっかりと私の手を握っていて、

それがどうしようもなく苦しくて、涙が溢れてくる。



彼を変えってしまったのは私だ

彼は優しい手を、持っているのに






   

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