2402 2/3 暗闇の中で誰かが泣いている声がする。目の前に現れた人物に、私は力なく笑った。目の前の人物の纏う服はボロボロで、身体は傷ついていて、黒い瞳を見開いて私を見る、 「・・・どうして、私の前に現れるの」 きっと頭の中で響く声はこの人のもの 「だって私は貴方でしょう」 小さく言った目の前の人物、確かに姿は同じだし、似ている。でも 「私は」 「貴方は私。忘れたわけじゃないよね、私は汚い」 その言葉に眉を寄せた。忘れたわけじゃない、でも忘れたかった。こんな自分とはオサラバして、新しい道を踏み出したかった。目の前の私は、皮肉そうに広角を上げると、恨むような目線を私に向けた。その行為に心臓が痛くなる 「・・・貴方も私を捨てるの」 どうして。どうして。捨てようなんて思ってない、新しい自分になりたかっただけ。それだけ・・・、いや・・・忘れようとしていたんだ。捨てようとしていたんだ。弁解する口も言い訳する言葉も見当たらない、ポタリと汚れた頬に涙を流した目の前の私に目を丸くする。 「私ね、大切な人がいるの」 涙を流しながらも淡々と話す彼女に、胸が痛くなる。瞬きもしないで、涙を止めることもしないで、彼女は唇を動かす。乾いた唇が、必死に何かを叫んでいるような気がして、怖い。 「・・・大切な人・・・・・・?」 「大事なの。私と同じような人、似ている人、約束したの。一緒にいるって、」 胸の中で何かが潰れた音がした。飛びちったその何かが体の中で疼いて。とても苦しい。息ができなくなりそうだ。泣いている彼女はまるで私を恨んでいるようで、私が彼女の人生を奪ったみたいに・・・、 「約束したんだよ」 「・・・う、ん」 「彼はね、私がどうしたら幸せになれるか考えてくれた」 ――お前には、それが幸せなのか 頭の中で響く言葉が私の脳内を侵食しはじめる。やめてよ、今更そんなこと言わないで。やっと、自由になれたと思ったの。そして頭の中で思い浮かんだアラジンの姿に瞳を細める、アラジン、アラジン・・・私を助けて。温かい手で私の手を握って欲しい。 「彼が、泣いてるの」 [しおりを挟む] |