追わないから逃げないで | ナノ



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彼はNO NAMEに傷をつけるし、痛めつける。

でもそれよりも辛いのは生きることだった。

彼が与えた食事は残さず食べないと彼は近くにあるナイフでNO NAMEの肌を切り裂く。

そして血を舐め上げると、これが生きる感覚だと言わんばかりの顔で

私に微笑むのだ。

それが辛いはずなのに、今までにない苦痛が自分に新しい世界を見せているようにみえた。

いつの日か彼でいっぱいになった心は、ジュダルなしでは生きられない、

そんな偽りの身体を作り上げる。身体は“生きたい”と、そう叫んでいるのだ。

傍にあったナイフをNO NAMEはゆっくりと持つと、左腕を差し出した。

肌には自分を何度も傷つけた証がついていてる、それを見下ろせば、

NO NAMEは息を吸い込んだ。

ゆっくりとナイフを自らの肌に触れさせると、プツと肌が切れる音がした。

ゆっくりとこぼれ落ちてくる赤いものに瞳を細めると、

その行為を進行させようと震える手を動かそうとした時。

ナイフを持っていたNO NAMEの右腕が強くつかまれた。

伸びてきたその手に唖然としていると、ゆっくりとその手の先を見つめた。

それはジュダルだった、案外速い戻りにNO NAMEの心臓は脈打っている。

だがジュダルはいつものように笑みを浮かべず、鋭い視線と威圧感をまとっている。

NO NAMEの身体が震えだすと、瞳がユラユラと揺れだす。

だがジュダルの目線は変わらない、ジュダルは落ちたナイフを踏み付けると小さく口を開いた。

「覚えとけよ、今度自分で自分を傷つけようとしたら許さねぇからな」

その言葉に全身が震える、鼓動が早くなって、小さな熱い息がこぼれ落ちる。

ダラダラと血が流れる左腕をジュダルはつかみあげると、舌で血を舐めとった。

「っ…」

鋭い痛みに顔を歪めると、ジュダルはNO NAMEを見た。

そして眉をしかめるのだ、小さく、ゆっくりと。

なぜそんな顔をするのか知らないが、彼は自分が傷つけた後でもこうゆう顔をする。

それをNO NAMEは黙って見つめているのだ、



それでも彼は私を傷つける。







   

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