1802 2/3 「ちょっといいか、NO NAME」 アラジン達が迷宮を攻略して帰ってきたお祝いに開かれた祭り、モルジアナちゃんはまだ目覚めないので、これないが、アラジン達と共に参加していたところ、肩をポンポンと叩かれる。振り返ればシンドバット様の姿があった。シンドバット様に連れられ、星がよく見える静かな場所まで来る。立ち止まったシンドバット様と同じように空を見上げれば、輝く星達が見えた。その美しさに、瞳を見開く。あそこで見た庭園の景色とはまた違う美しさ、綺麗だ。 「腕の調子はどうだ?」 「はい、だいぶよくなってきました」 すこし顔を歪めて話を切り出したシンドバット様に小さく笑えば、すこし疑問そうな表情を浮かべられる。 「・・・どうして君がそんなふうに笑えるのか、俺にはわからないんだ」 「私もよくわかりません」 どうしてこんなふうに笑えるのか、心の変化に気づいてはいたが、わからない。 「あの時は、すまなかった」 「なぜシンドバット様が謝るんですか、私の責任です」 シンドバット様があの時のジュダルのことに気を病むことはひとつもない。全部自分でひきおこした種なのだから。 「旅に・・・出るんだったな」 「はい。この国にも恩返しがしたいんです・・・そのために、色々見てみたいんです」 少し不安で、少し楽しみで。そしてこの素敵な国に役立つことがしたい、と思った。アラジン達の旅で、私にできることを見つけられるかどうかはわからないけど、もう立ち止まるだけの自分でいたくないような気がして。 「ジュダルは君をどこまででも追いかけると言った。旅をするのは危険だと思わないか?」 シンドバット様の険悪そうな顔つきに、少し瞳を細めれば、小さく息を吐く。それは思った、でも立ち止まっていたくない。自分の足で彼から逃げたいんだ。 「この国にいてくれNO NAME。君が俺が守ろう」 どうしてシンドバット様がそこまで言ってくれるかわからなかったけれど、それはこの国を愛している王様だから言える、優しい言葉。私は、いつまでも優しさに触れていていいわけじゃない。甘えることになれてはいけない。アラジンの優しさだけで、精一杯だから。 「・・・私、見たいものがたくさんあるんです」 なんとか自分の足だけで歩いていきたい、それは幸せを求めることよりも、やりたかったことかもしれない [しおりを挟む] |