1502 2/2 「NO NAME!部屋に戻るんだ!」 びくりと跳ねた身体、シンドバット様の険しい表情に足を一歩後ろに下げると、再び彼の声が鼓膜を揺らして、身体は動けなくなった 「待てよ、久しぶりに会ったのに挨拶も無しか?」 微笑む彼が怖くてたまらない。この笑顔は知っている、あの女官に向けた時のような笑顔。 「・・・どうした?」 伸びてきた彼の手に、肩が震えだした。立っていることもできなくなる 「彼女に近づくなジュダル!!」 「・・・あぁ?」 その瞬間、ジュダルの瞳は細まると持っていた杖を振ると、凄まじい風がシンドバット様に向かう、それをくらったシンドバット様からまたこちらに視線をうつすと、またにこやかな笑みを浮かべる 「・・・お前、今までここにいたのか?」 「・・・っ、」 「楽しかったか?俺のいない、この王国はよ」 「・・・わ、私はっ」 何を言おうと思ったのか覚えてない、何を口走るつもりだったのか、そこから先が出てこなくて、喉元でつっかえた言葉を出せなくて、頭が真っ白になったときジュダルの表情が変わった。 「俺はお前と会えなくて寂しかったよ」 その声が脳に届くと同時に、彼の拳が振り上げられると、それはまっすぐ腹に向かって、何かに押しつぶされるような感覚が腹に集中した。思わず腹からこみ上げたものを吐き出して、床に倒れこむ。 「・・・どうだ?久しぶりだろ?苦しいだろうが」 「ぐ・・・っ・・・」 そして頬を殴られると、再び拳が振り下ろされる。何度も、何度も拳を振り上げられれば、身体にその重さが突き刺さる。痛い、怖い、苦しい、辛い。全部の感情が入り混じって、もう抵抗なんてできない。 「・・・っ・・・あ・・・」 息を吐き出すことも困難になってきた状態で彼を見上げた。彼はきっと怒っているんだ、突然逃げ出した私に、約束したのに、裏切った私に。誓いを無残に切り捨てた、私に。私を殺してしまいたいに違いない、それならいいかもしれない・・・。私は、どうせ幸せなど感じてはいけない、人間なのだから。だから彼はきっと憎しみの表情を浮かべて私を睨んでいるに違いない。 「・・・な、んで・・・?」 何かが私の頬を濡らした。どうして・・・?どうして・・・・・・、 彼の瞳からこぼれ落ちていたものは紛れもない涙で、私の頬を濡らしたのも、彼の・・・涙 「ずっと一緒にいるっつったのは・・・お前だろ・・・?」 途切れてしまいそうな声に、心臓が揺らぐ。重い自分の腕を彼にさし伸ばして、彼の涙を拭えば、彼の瞳は閉じられた 「ジュダル、私は」 私は、どうしてここにいるのだろう。彼を愛すと誓ったじゃないか。子供のような、彼を 私の伸ばした手の腕をジュダルは掴むと、瞳を開けた。でもそこに見えた彼の表情は笑っているようで、心の底から笑っているようで 「お前が裏切ったんだよ、NO NAME」 伸ばした腕の骨が折れる音がした。鈍い音と鈍い痛みに、叫び声をあげた。 [しおりを挟む] |