1303 3/3 「おもてーだろ?そんなんじゃ一緒に旅はできねーぞ!」 アリババに持たされた剣が重くて、フラついてしまった。そんな私の笑いながら髪をなでてくれるアリババ、小さく笑みを浮かべた。アリババとアラジンとモルジアナちゃんと旅に・・・美しいものを、綺麗なものを・・・でも世界はそんなに美しくない。知ってる・・・でも、あるんだ、ちゃんとあるんだ、信じてる。それを見に行きたい、そしたら少し自分の存在価値がわかるような気がして。 「・・・あ、モルジアナ!修行は終わったか?!」 「はい、アリババさんはNO NAMEさんと楽しくおしゃべりですか。まったくのんきな人ですね、NO NAMEさん、こっちでお話しましょう」 「ちょ・・・NO NAME無理やりひぱってきたからっておこんなよ!」 二人の様子を眺めていると、心が落ち着く。あれから何週間がたった。だいぶ落ち着いた、ジュダルのことは思い出さないようにしてる。それでも頭にちらつくときはアラジンの手を握って眠っていた。彼の手は・・・温かい。 「やあ、NO NAMEにアリババくんとモルジアナ」 「シンドバットさん、どうしたんですか」 「いやね、今日煌帝国の皇子様がここへ来るんだよ。留学生という形で」 その言葉に心臓が揺らぐ。皇子様。そんな私の手を握ったのはアリババとモルジアナちゃんだった。 「大丈夫だ、ジュダルじゃない」 「・・・・・・は、い」 その留学生を迎えるために、港まで出る。私は来なくても大丈夫だと言われたが、アリババやモルジアナちゃんもいるなら、平気だった。ジュダルではない、ジュダルと関係はあるかもしれないけれど。 そして大きな船から出てきたその皇子の姿に、目を見開いた。 あの時の、皇子様。白龍様の姿だった。目が合うと同時に、彼の目は見開き、ずんずんとこちらに近づいてくる、どうすればいいのかもわからないまま、立ちすくんでいると、近くにいた彼が私の手を掴んだ。 「貴方は…あの時の!」 「・・・あの時は、ご無礼を・・・申し訳ありませんでした」 そそくさ逃げてきたのを覚えている、その時のことを思い出すだけで恥ずかしい。自分はそんな身分ではないのに 「そんなことは・・・いいんです、僕は貴方にずっと会いたかった」 「・・・・・・は、はぁ」 「でも貴方は確か、ジュダルの・・・」 そのことばが耳に入った瞬間、心臓が跳ねる。ドクン、ドクンと揺らぎ始める。嫌な想像しかできない。足元がフラついた私を引き寄せた大きな体。 「失礼、先に私が挨拶していいだろうか?」 「これは、俺のほうこそ失礼しました。挨拶を怠るなど・・・・・・」 膝をひくくして、拳を合わせた白龍王子。引き寄せたシンドバット様は小さく笑うと、アリババの手が私をひいた。 「大丈夫か・・・?」 「うん、平気・・・」 [しおりを挟む] |