1302 2/3 「NO NAME、何も・・・怖くないのよ?彼にはもう貴方に近づかせないから」 「違う・・・違うの、」 小さく頭を振って、小刻みに震える肩を抱き寄せたヤムライハさんの身体はとても暖かいのに、冷え切ってしまった身体がそのぬくもりを寄せ付けない。頭の中でフラッシュバックするジュダルの姿とあの時殴られた痛みが身体に染み付いて、今も生々しいほどに感じる、彼の気配。 怖いのに、彼に会いに行かなきゃいけない。 「ジュダルに会わせて、ヤムライハさん」 「なぜ・・・?ひどいことを、されたんでしょう?!」 「それでも、ジュダルを一人にしちゃいけないの・・・っ」 涙がこぼれ落ちる。彼の傍に、いないといけない。 ガチャリと扉の鍵が開くと、入ってきたのはアラジンだった。私の近くまでくると、アラジンはしゃがみこんで、私の瞳を優しく覗き込む。 「NO NAME、大丈夫だよ。世界はねもっと素晴らしいものがいっぱいあるんだ、僕と一緒に見に行こうよ。アリババ君もモルさんも一緒に・・・」 そう言って私の手を握ったアラジン、その手からだんだんと感じてくるぬくもりの感覚にゆっくりと瞳を閉じた。 一瞬見えた、青空と、太陽をめいいっぱい受けて笑う人間たちの姿に、なんだか嬉しくなった。 「アラジン君、この子は・・・絶対にジュダルのところへは戻してはいけないの」 「うん、わかってるよヤムさん」 「この子には綺麗で、美しいものをたくさん見て欲しい・・・鎖なんて、切ってあげたい・・・っ・・・」 「僕もだよ・・・・・・」 [しおりを挟む] |