追わないから逃げないで | ナノ



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ゆらゆらと揺れる視界の中に映ったのは、彼の・・・ジュダルの姿だった


無理やり身体をまさぐられれば、ひどい行為をたくさん受けた


けれど、次に映ったジュダルのあの表情は、一生忘れないであろう表情だった。







お前…俺と、ずっと一緒にいてくれよ






頭の中で反響した声が、胸を締め付ける。瞳を開ければ、慣れてしまったこの部屋の天井が視界に映る。傍にジュダルの姿など、なくて。素早く起き上がれば、裸足のまま部屋を出る。みんなが寝入ったこの時間に廊下を走れば、前に立ちはだかる少女の姿があった


「どうしたんですか、NO NAMEさん」

「モルジアナ・・・ちゃん」

あの時からモルジアナちゃんとは部屋もとなりだということに気づき、仲良くなっていた。早く打ち解けられたのは、同じ境遇にあった仲間だったから。彼女も奴隷という鎖に縛られていた、一人だった。

モルジアナちゃんの瞳が細まると、再び唇が開く

「こんな夜更けに、どこに行くつもりですか?」

「・・・お願い、どいてモルジアナちゃん」

「NO NAMEさん、一回落ち着きましょう・・・、部屋に、戻りましょう?」

肩に触れたモルジアナちゃんの手を振り払えば、瞳から涙が溢れ出した。私は、私はなんでここにいるんだろう。あの時、約束したはずなのに。あの時、私は彼に誓ったのに、なんで、自分だけこの幸せに浸っていたんだろう。

「ジュダルのところに行かなきゃいけないの・・・・・・っ・・・!!!」












脳内をとっくに侵食していたのは、彼だった



彼と交わした約束は、新たな、鎖となる。









   

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