追わないから逃げないで | ナノ



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「私はヤムライハよ、魔法使いなの」

「よろしくお願いします」

翌日、部屋を訪れたのは一人の女性だった。この国、シンドリアの八人将の一人であるらしい。

偉い人だ、どうしてこの部屋を訪れたのだろう。

「貴方の名前は?」

「私はNO NAMEといいます」

「NO NAME、私より全然若くて羨ましいわ…年齢は?」

「多分、16くらいかと…」

正しい年齢は分からない、歳を数えることなど意味がなかったから。

柔らかく微笑んだヤムライハさん。

「そう、まず…貴方はもうこの国の一人なの、だから自由なのよ」

「国の一人…?」

「ええ、シンドリアの国民」

胸の奥から何かが湧き上がったみたいに、涙が出そうになる

自分はこの国の一人…。それは認められなかったはずの、こと

「私は…っ…この国の一人になっていいのでしょうか…」

鮮明によみがえる今までの人生、それは自分を汚して落ちない。

「この国にはね、そうゆう人がたくさんいるわ。みんな寄り添って生きているの」

「寄り添って…?」

「ええ、みんな力を合わせて生きている。そんな国を作ったのは今の王様よ」

シンドバット様、私に国を、自由を与えてくれた人

感謝してもしきれない人

なのに、頭の片隅で、誰かが私の名前を呼ぶ。

「…………私は、戻らなくちゃいけないんです」

ヤムライハさんの瞳が細まると、私の手を握り締める

「ジュダルのことよね、王から聞いたの…辛かったわよね、きっとひどいことされていたと思う」

辛いことも多かった、でも彼は、ただ…愛がほしい人間で…

「でもね、ジュダルの所に戻ってはいけない、絶対に」

ヤムライハさんの瞳の色が変わったように、空気が変わった。

「ジュダルは人を平気で殺せる人、そんな人の傍にはいてはいけない…忘れなさい。貴方は新しい人生を、歩めるのだから」

その言葉が心にしめて、静かに私の心を落ち着かせた

新しい人生

諦めていた、人生のリセット



ここなら、出来るかもしれない




   

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