1002 2/2 「私はヤムライハよ、魔法使いなの」 「よろしくお願いします」 翌日、部屋を訪れたのは一人の女性だった。この国、シンドリアの八人将の一人であるらしい。 偉い人だ、どうしてこの部屋を訪れたのだろう。 「貴方の名前は?」 「私はNO NAMEといいます」 「NO NAME、私より全然若くて羨ましいわ…年齢は?」 「多分、16くらいかと…」 正しい年齢は分からない、歳を数えることなど意味がなかったから。 柔らかく微笑んだヤムライハさん。 「そう、まず…貴方はもうこの国の一人なの、だから自由なのよ」 「国の一人…?」 「ええ、シンドリアの国民」 胸の奥から何かが湧き上がったみたいに、涙が出そうになる 自分はこの国の一人…。それは認められなかったはずの、こと 「私は…っ…この国の一人になっていいのでしょうか…」 鮮明によみがえる今までの人生、それは自分を汚して落ちない。 「この国にはね、そうゆう人がたくさんいるわ。みんな寄り添って生きているの」 「寄り添って…?」 「ええ、みんな力を合わせて生きている。そんな国を作ったのは今の王様よ」 シンドバット様、私に国を、自由を与えてくれた人 感謝してもしきれない人 なのに、頭の片隅で、誰かが私の名前を呼ぶ。 「…………私は、戻らなくちゃいけないんです」 ヤムライハさんの瞳が細まると、私の手を握り締める 「ジュダルのことよね、王から聞いたの…辛かったわよね、きっとひどいことされていたと思う」 辛いことも多かった、でも彼は、ただ…愛がほしい人間で… 「でもね、ジュダルの所に戻ってはいけない、絶対に」 ヤムライハさんの瞳の色が変わったように、空気が変わった。 「ジュダルは人を平気で殺せる人、そんな人の傍にはいてはいけない…忘れなさい。貴方は新しい人生を、歩めるのだから」 その言葉が心にしめて、静かに私の心を落ち着かせた 新しい人生 諦めていた、人生のリセット ここなら、出来るかもしれない [しおりを挟む] |