0903 3/3 「っ…」 瞳を開けば、徐々に上がりつつある朝日を眩しく思う。 重たい身体を起き上がらせて周りを見れば、ここは昨日と変わらない庭園だった。 そしてもう姿のない“男”、息を吐き出せば、瞳を細くする。 「変な感覚」 昨日感じた変な感覚に、NO NAMEは戸惑っていた 今まで感じたことのない不気味な、感覚。 息を吐きながら、手元にあった花を口元に持っていけば、香ってくる香りでその感覚を消そうとする。 「…なんだこんな所に庭園があったのか」 響いた声に、視線を向ければ一人の男の姿、身に纏う服や威圧感からすぐにどこかの王だと察したNO NAMEは、見つからないうちに庭園から抜けようと立ち上がったが その男の視線はこちらへと向いた 「……へぇ、この美しい庭園にはぴったりの少女だ」 近づいてきた男に、NO NAMEは戸惑いながらも、頭を下げた 「顔を上げてくれないか、」 ゆっくりと顔を上げると、男の指先が顎に触れた、くい、と上に向かされ、視線は男の瞳へと向く 整った顔をした王様だ、この顔立ちでは女性はすぐに落ちてしまうだろう 「その、瞳…」 男はNO NAMEをくいるように見つめると、手を離し、笑顔を浮かべた。 「私はシンドリアの王、シンドバットだ。君は…ここの女官かな?」 「い、いえ私は…ジュダルの、」 女官ではない、でもジュダルのなんと答えればいい。 シンドバットの瞳が細まると、小さく口を開いた。 「なるほど…君がジュダルのね……」 「え…」 急に顔を変えたシンドバットはNO NAMEの腕を掴むと、NO NAMEを見た 「君はここにいてはいけない、ジュダルからは離れるんだ」 「なにを…っ…」 シンドバットはNO NAMEの言葉をまたないまま、歩め始めた。 [しおりを挟む] |