追わないから逃げないで | ナノ



0903
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「っ…」

瞳を開けば、徐々に上がりつつある朝日を眩しく思う。

重たい身体を起き上がらせて周りを見れば、ここは昨日と変わらない庭園だった。

そしてもう姿のない“男”、息を吐き出せば、瞳を細くする。

「変な感覚」

昨日感じた変な感覚に、NO NAMEは戸惑っていた

今まで感じたことのない不気味な、感覚。

息を吐きながら、手元にあった花を口元に持っていけば、香ってくる香りでその感覚を消そうとする。

「…なんだこんな所に庭園があったのか」

響いた声に、視線を向ければ一人の男の姿、身に纏う服や威圧感からすぐにどこかの王だと察したNO NAMEは、見つからないうちに庭園から抜けようと立ち上がったが

その男の視線はこちらへと向いた

「……へぇ、この美しい庭園にはぴったりの少女だ」

近づいてきた男に、NO NAMEは戸惑いながらも、頭を下げた

「顔を上げてくれないか、」

ゆっくりと顔を上げると、男の指先が顎に触れた、くい、と上に向かされ、視線は男の瞳へと向く

整った顔をした王様だ、この顔立ちでは女性はすぐに落ちてしまうだろう

「その、瞳…」

男はNO NAMEをくいるように見つめると、手を離し、笑顔を浮かべた。

「私はシンドリアの王、シンドバットだ。君は…ここの女官かな?」

「い、いえ私は…ジュダルの、」

女官ではない、でもジュダルのなんと答えればいい。

シンドバットの瞳が細まると、小さく口を開いた。

「なるほど…君がジュダルのね……」

「え…」

急に顔を変えたシンドバットはNO NAMEの腕を掴むと、NO NAMEを見た

「君はここにいてはいけない、ジュダルからは離れるんだ」

「なにを…っ…」

シンドバットはNO NAMEの言葉をまたないまま、歩め始めた。                     

   

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