追わないから逃げないで | ナノ



0902
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もう深夜になるのに庭園から出ないNO NAMEは花の中で瞳を閉じていた

花々の中で眠りに落ちるのは嫌いじゃない、香りを楽しむのも嫌いじゃない

でも自分にはそんな華やかなこと似合わない

汚い汚い自分は、花など合っていないのだ。

「綺麗な花」

どんな汚い人間に触れられようが、その美しさを保つ花を、私は好きだ。

この花のようになれたら、と何度思っただろうか。

でも消えないのだ、私の過去、記憶、汚れた身体は、全て元通りになってはくれない

こんな惨めな自分は、リセットすることはできない

どう生きればいいのかも、分からない

「おやおや美しい少女だ」

見知らぬかすれた低い声に瞳を開けて起き上がれば、そこには布で顔を隠した男が立っていた。

「誰ですか」

「私はこの国に仕えるものだ」

「……、」

なんだか変なものを感じる、黒にみちた気配、胸の中の渦が動き始めた。

「お前は力を持っている、お前自身は分かっていないようだが」

「……意味が、分かりません」

「まだまだ未熟故、理解することもできないだろうがな…だからお前に新たな力をさずけよう」

差し出された黒い小刀、

「要らないっ!」

黒い気配に満ちたその刀を受け取らず、拒否すれば、目の前の顔の見えない男が笑ったような気がした。

「…ふふ、やはり拒否するか」

「…っ…な、に」

だんだん意識が遠くなっていく、真っ白に染まっていく世界に

疼く胸、なんだか痛い。


 

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