0902 2/3 もう深夜になるのに庭園から出ないNO NAMEは花の中で瞳を閉じていた 花々の中で眠りに落ちるのは嫌いじゃない、香りを楽しむのも嫌いじゃない でも自分にはそんな華やかなこと似合わない 汚い汚い自分は、花など合っていないのだ。 「綺麗な花」 どんな汚い人間に触れられようが、その美しさを保つ花を、私は好きだ。 この花のようになれたら、と何度思っただろうか。 でも消えないのだ、私の過去、記憶、汚れた身体は、全て元通りになってはくれない こんな惨めな自分は、リセットすることはできない どう生きればいいのかも、分からない 「おやおや美しい少女だ」 見知らぬかすれた低い声に瞳を開けて起き上がれば、そこには布で顔を隠した男が立っていた。 「誰ですか」 「私はこの国に仕えるものだ」 「……、」 なんだか変なものを感じる、黒にみちた気配、胸の中の渦が動き始めた。 「お前は力を持っている、お前自身は分かっていないようだが」 「……意味が、分かりません」 「まだまだ未熟故、理解することもできないだろうがな…だからお前に新たな力をさずけよう」 差し出された黒い小刀、 「要らないっ!」 黒い気配に満ちたその刀を受け取らず、拒否すれば、目の前の顔の見えない男が笑ったような気がした。 「…ふふ、やはり拒否するか」 「…っ…な、に」 だんだん意識が遠くなっていく、真っ白に染まっていく世界に 疼く胸、なんだか痛い。 [しおりを挟む] |