0802 2/2 「今日は、空が青い」 いつもより雲が少なく、青く見える空を白龍は見上げた。 なんだかこの空を、もっとよく見たい。単純なその考えから白龍は足を動かして庭園へと向かった。 庭園にはあまり行ったことがない、行く意味がなかったし、自分に花々たちを見ることなど不要だったから なのに今日は違う気分だ。 「青い…」 あまり来たことのなかった庭園からの空はとても青かった、宮殿から景色と違って 視界いっぱいに広がる景色に、瞳を数階瞬きする。 その感動は耳に入った誰かの呼吸の音で打ち消される。 「…女官?」 すぐ近くの花々が生い茂る中に、女の姿があった、倒れているようで、白龍はすぐに駆けつけて身体を抱き上げようとした時、 手が止まる。 「…、」 時間が止まったような感覚、自分の視界に写っているのは少女の姿。 花に囲まれて瞳を閉じるその姿に、思わず呼吸をすることを忘れてしまうかのようだった 「…眠っている」 倒れているのかと勘違いした白龍だったが落ち着いてように胸をなでおろす。 そして自然と白い肌へと伸びた手が、少女のまぶたの動きによって止まる。 「っ…」 瞳を開いた少女は白龍の姿を瞳にうつすと同時に起き上がって、白龍から距離を置くように後ずさる。 「…すいません、ご無礼、を…」 言葉が出てこなかったようで、とぎれとぎれの言葉が耳に入る。 白龍は遠ざかった少女に近づいて腰を下ろすと、その少女をゆっくりと見つめる。 黒い髪に人形のように白い肌、そして自分を見上げる大きく丸い瞳の中の漆黒の瞳はまるで自分の心まで見透かしているような瞳。 瞬きすることも忘れた、白龍は小さく口を開いた。 「お前、名前は?」 「………NO NAMEです」 「NO NAME…」 静かに囁かれた白龍にNO NAMEは少し戸惑ったように瞳を細める。 「主に誰に仕えている女官なんだ?」 「いえ…私は、ジュダルの……」 「ジュダルの?」 まだ何か言いたげのNO NAMEだったが、言いにくそうに口を紡いでいた。 「あの…っ、すいません…私、もういかなくちゃならないので」 「ちょ、」 呼び止める声も届かないまま、NO NAMEの姿は消えていく。 鮮明に頭に焼き付いた少女の姿が、鼓動の速さを緩めないまま、 青空が、夕日に変わっていく。 [しおりを挟む] |