追わないから逃げないで | ナノ



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「俺の殴った所が痛いのか…?」

ジュダルの問いかけにふるふると頭を振ったNO NAMEを、

ジュダルは苦しげな表情で見つめていた。

「泣くなよ…泣くな、」

苦しい、胸が締め付けられる。

生きることが怖い、とあんなに綺麗な瞳で言ったNO NAMEの瞳が揺れている。

そこから涙がこぼれ落ちて、唇をぎゅっと噛むNO NAMEの姿が頭に焼き付いて。

ジュダルはゆっくりとNO NAMEの頬に触れると、壊れ物を触るように撫でる。

「…っ、」

小さく声を漏らす、押し殺すように出るNO NAMEの声はジュダルも苦しめた。

だが、苦しむその胸には前にはないものがあった。

「(なんで、こんなに苦しんだ)」

人を殺すのも、傷つけるのも、泣かせるのも、楽しかった。

それで自分は満足できた。

のに、こいつの泣き顔は俺を苦しめる。

「…NO NAME…っ」

ゆっくりと細い身体を抱きしめると、NO NAMEは驚いたように目を丸くした。

今までジュダルは優しく抱きしめるなんて行為はしなかったからだ。

ぎゅう、と優しく抱きしめるジュダル。

「なんで…、」

搾り取られたような声がNO NAMEから発せられると、ジュダルが耳を傾けた。

「どうして、そんなふうに抱きしめるの…っ…?」

ジュダルの胸の中で必死にNO NAMEは叫んだ、苦しくて、悲しくて、辛いのに。

どうしてこうゆうことをするのかと。

「わかんねぇよ!」

「…っ、」

ジュダル自信も理解できていなかった、こんな自分、自分じゃない。

しっかりと分かっている、これは俺じゃないと。

なのに、抵抗しようとしても、ダメなんだ。

殴ろうとしても、ダメなんだ。

――NO NAMEの泣き顔が焼き付いて、離れない――…。

「……苦しいんだ、俺は…」

切なく響いたジュダルの声にNO NAMEはただ驚いていた。







   

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